サイコビリー(Psychobilly)は、1970年代後半〜1980年代前半に誕生した音楽ジャンルのこと。ロカビリーとパンク・ロックからの影響が色濃いジャンルで、ウッドベースによるスラップ——“カチカチ”というパーカッシブな音。ファンの間では“バチバチ”と表されることが多い——演奏を多用したサウンドが特徴。パンク・ロック色の強いバンドについてはパンカビリー(Punkabilly)と呼ぶ向きもある。

発祥

 サイコビリーの起源は、1976年にアメリカ・ニューヨークで結成されたThe Cramps、もしくは1980年にイギリス・ロンドンで結成されたThe Meteorsだと言われている。結成はThe Crampsの方が先だが、ホラーテイストな歌詞やライヴパフォーマンスなどはサイコビリー的ではあるものの、あくまでガレージ・ロックの色が濃いと評されることが多く、のちにサイコビリーの特徴となる「ロカビリーとパンク・ロックを融合させ、スラップ演奏を採り入れたサウンド」を生み出したのは後発のThe Meteorsだという見方が強い。

In Heaven
The Meteorsの1stアルバム

Album Review

1980年代

 1980年代、イギリスでは「Stomping at the Klub Foot」というサイコビリーイベントが開催されたのをきっかけにサイコビリーが浸透していった。この頃に結成されたバンドはRestless、The Sting-Rays、Demented are GoGuana Batz、Frenzy、The Krewmen、Skitzo、Frantic Flintstonesなど。

 さらにその波はイギリス国外にも広がり、フランスでHappy Drivers、オランダでBatmobile、スイスでThe Monsters、ドイツでMad Sin、デンマークでNekromantix、ロシでThe Meantraitorsなど、ヨーロッパの各地でサイコビリーをフォローするバンドが誕生していく。

 一方アメリカでは、1985年にThe QuakesとThe Reverend Horton Heatが結成。前者は1988年に、後者は1990年にアルバム・デビューを果たし、いずれもアメリカでのサイコビリーの知名度上昇に貢献したものの、ムーブメントを仕立て上げるまでにはいかず、シーンの中心はあくまでヨーロッパにあった。

1990年代

 1990年代初頭にはアメリカを中心にメロディック・ハードコア・ブームが吹き荒れ、サイコビリー界にも強い影響を与えた。1994年にオーストラリアで結成されたThe Living End、1995年にアメリカで結成されたTiger Armyもそれぞれパンク色の強いサイコビリーバンドで、パンクファンからも高い支持を得た。これをきっかけに、パンクファンの間でサイコビリーの存在が広く知られるようになる。

 日本でもMad Mongols、Spike、Battle of Ninjamanz、デスマーチ艦隊Cracksといったサイコビリーの要素を含んだバンドが多く結成された。

2000年代

 この頃になるとサイコビリーはロカビリーを踏襲したバンドとパンク色の強いバンドの二極化が進む。ヨーロッパ勢はロカビリー系統、アメリカ勢はパンク系統のバンドが多い傾向にあるという。また、1996年に結成し2004年にアルバムデビューとなったHorrorPopsを始め、The Silver Shine、The Creepshow、Kitty in Casket、The Hellfreaksなど、女性メンバーが参加するサイコビリーバンドも増え、バラエティに富んだジャンルに進化している。

アンダーグラウンドなジャンル

 地道に知名度を上げてきているサイコビリーだが、世界的に見ても大人気とは言えないようで、このインターネット時代にも手軽に情報を集められないジャンルである。このページに名前を挙げたバンドのアルバムでも廃盤になっているものは少なくないし、流通が少ないのか廃盤でなくとも入手に苦労するケースも多い。

 従って、もしも気になったアルバムがあれば、なるべく早く手に入れることをおすすめする。すでに廃盤になっているものでも突然ポッと入荷されることがあるので、こまめにショップをチェックしよう。あるいは思い切ってレーベルやバンドに再発リクエストを送るのもいいかもしれない。

 実はこのページの筆者も2010年頃にサイコビリーを知ったクチで、まだ聴いたことがないバンドも多いし、知識も充分とは言えない。そんなニワカがわずかに手に入れた情報でも誰かの役に立てばと思い、このサイトを作った。今後より知識が増えればこのページももっと充実すると思うので、気が向いたらまたチェックしてみてね。

このページで取り上げたバンド(一部)

last up:2017/06/25