あらすじ:女子校で教鞭を取る鮎川茜の教え子・森崎典子が転落死した。森崎は生前、見ると死ぬという「呪いの動画」を熱心に探していた。森崎の死に不信感を覚えた親友・北山理沙は動画を探し当てるが、彼女もまた命を落としかける。茜が自責の念を感じ始めた直後、唯一の支えだった恋人・安藤孝則までもが動画の毒牙にかかる。

妖力と忍術を得た貞子

 1990年代に社会現象とも言える大ヒットを記録したホラー映画『リング』シリーズのひとつ——のはず。“はず”ってか、普通にそうなんだけど、『リング』は初代とその続編しか観たことがない私からすると「えっ、貞子ってこんなんだっけ?」と戸惑う描写が多く、もしかしてシリーズとは別物なのではと思えてくる。私の記憶だと貞子はあくまで人間由来の怨霊(?)であり、姿形も人間のそれであった。でも『貞子3D』の貞子はこんなんである。

貞子?
© 2012『貞子3D』製作委員会

 なんか脚長い。これ、『犬夜叉』に出てた気がする。

『犬夜叉』1巻にでてくる百足上臈(むかでじょうろう)
© 高橋留美子/小学館

 これ妖怪だけど。貞子いつの間に妖怪になってん?

 さらに

貞子増殖
© 2012『貞子3D』製作委員会

 増殖! ここでは2匹(※井戸から出かけの1匹を合わせると3匹)しかいないけど、このあとどんどん増えていく。妖力だけでなく分身の術まで身につけてやがる。これから主人公の鮎川茜(石原さとみ)を追いかけまくるのだが、その動きがホラーというよりは単純にキモい。ムカデやゴキブリといった虫系のキモさ。ホラーの怖さと虫のキモさは全然別物だと思うが、『貞子3D』はかなり明確にキモさをホラーとして使っている。

 そういうホラーもアリっちゃアリだろうけど、果たして貞子を使ってまでしてやることだろうか? 外見だけなら“長髪で顔を隠して白装束を着ているだけの、ちょっと変わった人”でしかない貞子をわざわざ奇形に変えて恐怖を演出しているの、すごく安直だし倫理的にもどうなんだろってしらけてくる。もともと虫みたいなキモさを追求したキャラクターだったら気にならなかったかもしらんが。その虫系貞子にロックオンされた茜はどうするかというと、物理攻撃。石とかロッカーとか鉄パイプみたいなのを貞子にぶつけまくって倒す。もはや完全に貞子はネームバリューとして割り切っておるな。

 しかし、貞子以外の部分はわりと普通である。画面は妙に暗い気もするが、ホラー映画だしこんなもんなのかな程度。役者さんも安定しているしね。石原さとみファンとしては彼女のリアクションがたくさん観れるのは結構オイシイ。ただ私は石原さとみてわりと何やっても石原さとみだなと思うところがあって、今回もわりと石原さとみでしたね。意味わかんないか(笑)。

 いやね、石原さとみはかなり役になりきるタイプだし、リアクションも嘘くさくなくてすごくナチュラルだけど、ベースにある素の石原さとみの癖はあんまり抜けてないんじゃないかなって思うことが多いのだ。あくまで“石原さとみがこの役のような人生を歩んでいたらこんな感じの人間になるだろう”って演技な気がする。演技派と言われている役者はもっと普遍的な雰囲気があるというか、ごく自然に役に染まれるところがあるように思う。そうした人たちと比較すると石原さとみはちょっと人間的に癖が強くて、結構好き嫌いが分かれる役者なのではないか。まあ私自身は彼女の演技は好きだし、役者の枠を超えて尊敬しているくらいだけども。

 話を『貞子3D』に戻す。本作はタイトル通り3D映画だけど、2018年現在3Dを楽しめる環境はあまり一般的ではないこともあり、DVDや動画配信サイトでは『貞子3D〜2Dバージョン〜』で発表していることも多い(タイトルが出落ちっぽくてちょっと面白い)。もちろん私も『—2Dバージョン』で観たわけだけど、3Dでの上映を前提に撮っただけあって、「あ、これ3Dだと立体になるんだな」とわかるシーンがわりとある。貞子の手とか飛び散るガラスは一発でわかるよね。公開時は世界でいちばん、3Dが似合う女。なんて宣伝文句があったらしいが、確かに画面から出てくる貞子を3D化しようって発想は面白い。でも実際は3Dにする必要性があったのか疑問に感じた。貞子はあんまり画面から出てこなかったし、挙句井戸から直接出てくるし……。その辺も含めてちょっと微妙な作品であった。

貞子3D 2枚組(本編2D&3D blu-ray・特典DVD付き)

3D対応プレイヤーなら3Dでも観られる

last up:2018/09/08