あらすじ:『Lassy』編集長から雑誌の企画をプレゼンするチャンスを与えられた悦子(石原さとみ)。だが、直後に幸人(菅田将暉)の父親で景凡社きっての大物作家・本郷大作(鹿賀丈史)の新作に盗作疑惑が浮上した。『Lassy』のプレゼンの〆切りが刻一刻と迫っている中、悦子は本郷の盗作の疑いを晴らすために疾走していく。

地味にスゴかった

 憧れの『Lassy』編集部に異動する夢と校閲者としての仕事を果たす責任。ふたつを天秤にかける状況に迫られた悦子だが、ごく自然に校閲者としての仕事を優先していた。悩み抜いた挙句ではなく、気づけば本郷先生のことで頭がいっぱいになり、『Lassy』のプレゼンを後回しにしていたというのがなんとも悦子らしい。

 そして今回はあくまで偶然本郷先生が窮地に陥ったからそちらを気にかけてしまっただけで、『Lassy』編集者になる夢を諦めたわけではないのだというのも良かった。どっちつかずと言えばそれまでだが、悦子の愚直なキャラクターにはよく合っていました。

『地味にスゴイ!』自身のプレゼンを悦子と偽って提出しようとする森尾(本田翼)
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 その視点から見れば、悦子が森尾(本田翼)のプレゼンを提出する展開は微妙だったね。ストーリー的な調整とはいえ悦子のキャラクターにはそぐわないし、森尾とセシル(足立梨花)もそんな悦子の性格を理解しているはず。それを強引にやり通しちゃった森尾とセシルは好感度がちょっと下がってしまった。森尾の方は幸人をぶった切ったことでなんとかバランスは取れたけど、セシルがな〜。演じた足立さんが不憫である。しかし何故セシルはいつまでも幸人をイケメンと認めなかったのか。読者モデルになって以降も相変わらずよーく見たら大したことないですってとか言ってたし。なんなんだろう、あれ。

『地味にスゴイ!』このままの関係を続けることに決めた悦子と幸人
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 そして幸人と付き合わないって選択を取ったのはさすがにびっくりした。本格的な関係にならないだけで今の関係を解消するわけではないけども、すっかり進展するものだと思っていたので不意打ちをくらった感じ。番宣というかキャッチコピー?にある※恋愛ドラマですではありません!!はこの展開の伏線だったのかなあ。まあ、続編は作りやすくなったかもしれないけど……。期待していいのかね?(笑)

総評

 正直言って第1話の時点では演出がくどいのと編集者が露骨に踏み台になっている点に相容れなさを感じたが、話が進むとその辺は解消されて、いつの間にやら毎週楽しみにするようになっていた。もっとも「そんなとこまで事実確認(指摘出し)をする必要があるのか?」って疑問は相変わらず続いたけど、その辺は悦子の行動のきっかけに過ぎない——ヒッチコック的に言えば“マクガフィン(物語の鍵になる要素だが、存在自体に深い意味はない)”であり、悦子の行動さえ面白ければとりあえずは目を瞑れるレベルであったと思う。

 『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』のタイトルも放送前〜放送初期は微妙だと思っていたが、話が進むにつれてそのタイトルの意味がじんと響くようになりましたね。特に第9話と最終話は『地味にスゴイ!』というタイトルでなければ輝くことはなかったでしょう。校閲だけでなく、同じように“地味だけど無くなると多くの人が困る仕事”全般に視野を広げ、その上でエールを送るこのドラマは素晴らしかったよ。

 私は創作物におけるメッセージ性というのはあんまり好きじゃないけど、このドラマには説教臭さや厭味がなく、すんなりとそれを受け入れられた。これはキャラクターの成功が大きいと思う。メインキャラクターで厭味に感じる人はひとりもいなかったもんね。あの貝塚(青木崇高)だって話が進むにつれて自然と“愛すべきバカ”に変化していったし、最後は悦子にエールを送る存在になったのだ。そして何より藤岩(江口のりこ)のキャラクターが愛らしすぎた。

『地味にスゴイ!』藤岩「現地に行って確認したので間違いありません」
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現地に行って確認したので間違いありません

 あんだけ「校閲に事実確認など要らぬ、外出など不要」と言ってた藤岩さんが、事実確認のために青森まで行ったことをゲロったシーンは最高だったよ。変な扱いでなくごく普通に同性愛者(米岡@和田正人)を出していたのも良い。しかしそれ以外の校閲部員には陽が当たらず、キャラクターをほとんど把握できなかったのは寂しい。人数もあまり多くはないし、続編を作ることがあればスポットライトを当ててやってほしいなあ。

 キャスティングも完璧で皆それぞれのキャラクターにしっかりハマっていたと思う。どうも本田さんはずいぶん評判が悪いみたいだけど、個人的にはそんなにひどいとは思わなかった。もっとも、いつぞやのノートパソコンをいじりながらあー、忙しい忙しい(棒)は見事な棒っぷりだったし、若干鼻にかかった声をしているのは気になるし、目力があまりなく常にぼんやりしている印象は受けるけれど、森尾のキャラクターには合っていたと思う。本田さんの演技をちゃんと見たのが今回が初めてというのもあるだろうけれど。まあアメリカの名優・グレゴリー・ペックも目力がないだ演技が下手くそだ大根だとよく言われているみたいだし、気にすることはない……とはさすがに言えないが(笑)、『ドラゴンクエスト』のCMでの輝いた笑顔を見る限り、もっと可能性はあると思うので頑張ってほしい。

 視聴率は最高が13.2%、最低が11.2%。全話で10%前半をキープしていたわけだから、視聴率的にも成功したドラマと言えるだろう。今期は『ドクターX』『相棒』と人気シリーズがぶつかったし、恋ダンスが話題になった『逃げるは恥だが役に立つ』には後塵を拝したのでイマイチ目立たなかった印象は強いが、しかし前期で最高視聴率を誇った『家売るオンナ』(最高13%、最低9.5%)よりは上なのだ。まさに“地味にスゴイ”結果を残したわけです。石原さんの演技も生き生きとしていたし、これが代表作の一つに数えられるのは確実でしょう。スタッフの皆さん、お疲れ様でした。良いドラマでしたよ。

last up:2016/12/08