ひみつのアッコちゃん

公開

あらすじ:化粧に興味津々の小学生・加賀美あつ子——通称・アッコは、大切にしていたコンパクトを壊してしまった夜、鏡の精を名乗る男性からなりたいものになんでもなれる魔法のコンパクトを渡される。魔法の力で大人になったアッコは、大手化粧品会社・AKATSUKAの直営店に出向き憧れの化粧を満喫。さらに商品の感想を聞かれてダメ出しを連発したところ、同社企画開発室室長の早瀬尚人に気に入られ、アルバイトとして働くことに。胸を躍らせながら大人の世界に飛び込んだアッコだが、その時AKATSUKAは重大な経営問題に揺れていた——。漫画界の巨匠・赤塚不二夫が生み出した魔法少女ものの代表作『ひみつのアッコちゃん』の実写化作品。

むちゃくちゃだ!?でも、案外面白い

 泣く子も黙る赤塚不二夫の元祖魔法少女漫画、『ひみつのアッコちゃん』。もしもアッコちゃんがいなければ「ハニーフラッシュ!」も「ムーンプリズムパワー!」も「デュアルオーロラウェーブ!」も存在しなかったはず(※筆者の精一杯の変身少女知識)。そんな『—アッコちゃん』が、2012年に実写映画化! 嫌な予感しかない! でもなぜだかすごく気になるなあ……なんて思っていたことをふと思い出し、Amazon Prime Videoで検索したらちょうど追加料金なしで観られたので、今更ながら観賞する。

 女子小学生の加賀美あつ子(吉川里琴)——以下・アッコ——は、学校でパパから贈られたコンパクトを片手にお化粧を楽しんでいたところ、ガキ大将の男子たちにからかわれた挙句、コンパクトの鏡を割ってしまう。意気消沈していたアッコだが、その日の夜、不思議な光に導かれて自宅の外に出ると、そこには“鏡の精”を名乗る香川照之がいた。

実写版鏡の精

© 赤塚不二夫/2012「映画 ひみつのアッコちゃん」製作委員会

 いや、香川照之!? 悪いけど夜中に呼び出された先にいる黒づくめでサングラスの香川照之がテクマクマヤコン、テクマクマヤコンラミパス、ラミパス、ルルルルルはNG。そもそも鏡の精? というか鏡をくれる人って男性だっけ? アニメだと女性だったような記憶が……と思って調べてみたら、なんと原作では男性なんじゃって!

鏡の国の人

『ひみつのアッコちゃん 完全版』1巻より

 知らんかったなあ。黒づくめでサングラスという出立ちも原作からだったのか。しかし原作は昼間にやってくるのに対して、実写映画版では真夜中。アニメでは夜中に鏡の声が聞こえてきて……という設定だったはずなので、原作とアニメを合体させたのかもしれない。そう考えたらだいぶ納得がいったけれど、それでも夜中に全身黒ずくめの香川照之が小学生に向かってラミパス、ラミパス、ルルルルルはNG。

 そんなこんなで、突如現れた鏡の精からテクマクマヤコン、テクマクマヤコンと唱えればなりたいものになれる魔法のコンパクトを手にしたアッコは、さっそく大人の自分になってみる。大人のアッコを演じるのは、綾瀬はるか。子供時代を演じる吉川里琴とよく似ていて、これはかなりキャスティングを頑張りましたね。香川照之も原作の男性と似ているし(でも真夜中に小学生にラミパス、ラミパス、ルルルルルはNG)。

 魔法のコンパクトの力が本物だとわかったアッコは、大嫌いな塾をサボるために加賀美一家の親戚の女性を装って塾をズル休みする手配を取り、大人となって街で遊びまわる。そして、偶然目に入った大手化粧品会社・AKATSUKAの直営店で商品に率直な感想を述べたところをクソイケメン社員・早瀬尚人(岡田将生)に気に入られて同社企画開発室にアルバイトとして入社することになった——。

 と、ここでかなり大きな違和感に襲われる。えっ、いくら大人の姿になったとはいえ、いくらスカウトとはいえ、いくらアルバイトとはいえ、そんなに簡単に大手化粧品会社に潜入できるのか? しかも企画開発室なんて企業秘密の宝庫じゃん? さらに今のAKATSUKAは熱海専務(谷原章介)主導のクーデターによって巨大企業による増資の計画が出ており、その流れで株主総会までやりだすのだ。か、株主総会!? ファンシーな設定のわりに変なとこが妙にリアルだね?

 普通に考えたらちぐはぐに思うところだけど、たぶんこれ、劇中のアッコみたいに大人の世界に憧れている女の子をメインターゲットにした映画なんだね。大人の小難しい会話はよくわからないけど、よくわからないからこそ惹かれる気持ち、子供のころには確かにあった。もちろん、非現実なアニメや漫画の世界に惹かれることも。そうした子供の目線に合わせて作られているのかなと考えるとちぐはぐ感はなくなるし、映画もそう考えられる作りになっていたと思う。

 それと同時に、この映画はかつて『ひみつのアッコちゃん』に熱中した親世代も視野に入れていたのではないか。確かに魔法のコンパクトは便利だし人の役に立つこともあるが、かといって便利なものを安直に使いすぎるのはよくないとの主張もあって教育的にも悪くないし、親世代にはおなじみの俳優が変身したアッコを演じているのもツボに入ると思う。私もアッコが変身するAKATSUKA前社長・大杉漣で無事撃沈。

アッコが変身中の大杉漣

© 赤塚不二夫/2012「映画 ひみつのアッコちゃん」製作委員会

 さて、AKATSUKA買収計画はアッコの活躍も手伝って無事に阻止され、あとはアッコと尚人の恋の行方に注目するだけ——と、思いきや、突如、AKATSUKA買収計画の首謀者であったゴールド工業会長・鬼頭大五郎(鹿賀丈史)が、協力者である熱海専務を呼び出して、なにやら話している場面が映る。鬼頭によれば、彼がAKATSUKAの買収に乗り出したのは、ゴールド工業のスポンサーである外国の軍事組織が、尚人が新製品のために研究していた“温度によって色が変化する技術”を欲したからだという。

 この技術をうまく応用できれば、戦闘機を空と、戦車を砂漠や森林と完全に同化させることも夢ではなく、戦況を一気に有利にできる。しかし、その技術が万が一敵国に漏れたら、戦況は一気に悪化する。AKATSUKA買収計画が頓挫した今、当然鬼頭のスポンサーは危機感を覚えており、敵国に技術が漏れるくらいなら——AKATSUKAの生産ラインを爆破しろと言われているんだ! もう爆弾は仕掛けた! あと30分で爆破する!

大爆発

© 赤塚不二夫/2012「映画 ひみつのアッコちゃん」製作委員会

なんだってえーーーー!?

 魔法のコンパクトはその秘密を知られたら効果がなくなる、つまり変身後に使ったら元に戻れなくなるって設定だから、当然、そのリスクを犯してでも秘密を明かす勇気があるか? って流れに行くであろうことは予想できたけど、まさか爆弾が出てくるとはねえ……。てっきり、尚人のことが好きだから本当の自分を知って欲しいけど言えないよ〜、でもいつかは言わなくちゃいけない……どうしよう……って可愛らしい方向でやり続けると思ったから、いきなりのビッグスケールに驚いたよ。でも、妙に説得力のある設定で笑ってしまう。確かに戦闘機や戦車の色をコロコロ変えられたら向かうところ敵なしですわ。

 その爆弾騒ぎもアッコの活躍によってなんとかなり、アッコは元の女子小学生に戻り、尚人とも別れを告げる。しかし今度は魔法のコンパクトに頼ることなく勉学に励んで本当の意味で成長を果たし、大人になってAKATSUKAの面接に参加。そこで面接官をしていた尚人と感動の再会にこぎつけるのだった——。

 しかし、変身してAKATSUKAに潜入していた時代のアッコは10歳で、尚人は27歳。実に17歳もの歳の差がある。成長したアッコがAKATSUKAの面接を受けるのは2022年だから、アッコ20歳で尚人は37歳。子供からしたら立派なおじさんだよね。まあ27歳の時点でおじさんだって子もいるだろうが、しかし子供たちにとって37歳は本当に抵抗ないんだろうか? 尚人を演じた岡田将生は10年経ってもまだイケメンだから、全然ありなのかな?(37歳じゃなくて31歳だが)

 色々とツッコミどころはあったけども、子供目線の映画だと考えたら全然違和感ないし、いい意味で漫画っぽくてよくできた映画なんじゃないかと思う。働く大人とおしゃれに興味があるお子さんなら喜びそうだなあと。そうしたお子さんの姿を容易に想像できる微笑ましい映画でした。原作とは完全に別物になっているから、熱心なファンから観たら違うかもしれないけどね。

映画 ひみつのアッコちゃん

本編BD1枚+特典DVD1枚(primeのみ配信)

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