名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)

公開

あらすじ:毛利探偵事務所に届いた依頼により、新設されたテーマパーク・ミラクルランドにやってきた江戸川コナン。そこで受けた依頼は「私が抱えている“ある事件”を、これから教える複数のヒントをもとに探し出し、解決してほしい」というもの。この依頼を12時間以内に解くことができなければ、事前に手首に装着させた“ミラクルランドの腕時計型フリーパスID”に仕込んでいるプラスチック爆弾を爆破させるという。それは、依頼主に呼び出された毛利蘭と少年探偵団の仲間たちにも装着させていたものだった——。1997年以降、毎年新作を公開してきた人気テレビアニメシリーズ『名探偵コナン』の劇場版、記念すべき第10作目。

くっ、「らああああん!」が足りない!

名探偵コナン 水平線上の陰謀ストラテジー』に続く劇場版第10弾。節目の作品ということもあり、原作第1話に登場するテーマパーク・トロピカルランドを思わせる舞台、劇場版第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』で使われたプラスチック爆弾の採用、可能な限り登場する歴代コナン・キャラクターなど、『名探偵コナン』の集大成にすべく腕まくりして作られたことが伺える作品だ。

 では、面白いか? と聞かれると——、正直に言えば微妙なところ。でも、具体的にどこが不満なのかと問われると自分でもよくわからない。実はこの映画、2年前にも1度観賞しているんだけど、その時も同じように「微妙だけど不満点がわからない」状態になり、感想を書くことができなかった。私が劇場版『名探偵コナン』に不満を覚える時、その原因は「『名探偵コナン』らしくない」「ミステリ(サスペンス)的に面白くない」のふたつにだいたい絞られるのだが、今作はその辺はわりとクリアしている印象なんですよね。

 ミステリとしてはいわゆる暗号モノ(?)に当たるのかな。ひとつの暗号を解読すると、また次なる謎やトラップが……といった具合。宝探しっぽい感じで、『名探偵コナン』だと少年探偵団メインの話でよくやるイメージ。だから『—コナン』らしさはあると思う。ただ、今回少年探偵団が完全におまけポジションなので、その辺は『—コナン』っぽさが不足していると言えるのかもしれない?

 暗号が示すもの——つまり正解は基本的に劇中に登場する架空の住所や団体なので、観賞者が自力で答えにたどり着くのは難しそうな感じ。しかし『—コナン』の場合、読者の推理で答えにたどり着くのは無理だろ〜ってタイプの話もわりとあるんで、作品的には欠点にならないとも思う。主人公の江戸川コナン(高山みなみ)が真実を見つけ出したうえで、暗号やトリックを解説してくれるのもまた楽しいんだよね。劇場版の場合、『名探偵コナン 14番目の標的ターゲット』がそれに近い作品だったはず。『—14番目の標的ターゲット』はファンの間ではそれなりの評価を受けており、私も結構好きな1作である。これと似たような感じの作りだと考えれば今作もそこそこ面白かったな〜と思うはずなんだけど、思わないんだよねえ……。

『—14番目の標的ターゲット』はミステリ要素が薄い代わりにサスペンス要素を強くしていたけれど、今回はそれがなかったからかな? いや、でも一応アクション要素を強めてそれなりにハラハラはさせていたしなあ……。説明セリフが多くて頭で整理しづらい? 『—時計じかけの摩天楼』のように犯人と工藤新一(山口勝平)に繋がりがあると思わせておいて意外になかったから? 事件の真相がいまいち面白くない?

 2度目の観賞後もどうにも考えがまとまらなくて、布団の中でまで今作に微妙な感情を抱く理由をずっと考えていた。すると突然ひらめいた。わかったんです! 私が『—探偵たちの鎮魂歌レクイエム』にいまいちノれない理由が! それは

「らああああん!」

 がなかったからなんだ!

「らああああん!」は、『名探偵コナン』において主人公の江戸川コナンもとい工藤新一がヒロインの毛利蘭(山崎和佳奈)の身に危険が迫った時に発する定番のセリフである。ヒーローがヒロインの名前を叫ぶのは一般的なシチュエーションだが、『—コナン』の場合はそこにちょっと違う意味合いが加わる。というのも、コナンは普段“黒の組織に毒薬を飲まされて身体が縮み、高校生探偵の工藤新一から小学生の江戸川コナンになった”ことを隠すため、幼なじみの蘭を「蘭ねえちゃん」と呼んでいるからだ。それなのに彼女の危機を知った瞬間、呼び捨てで「らああああん!」と叫ぶ。それは彼女の身を案じるがあまり冷静さを欠いている証であり、作品の核のひとつである“新一と蘭の絆”を強く表しているセリフでもあるということなのだ!

 ここで大切なのはコナン(新一)が実際に「らああああん!」と叫んでいるかいないかではなく、そのセリフが登場していたかのように思えるほどコナン(新一)が蘭を想う描写が存在したか? というところ。今作『—探偵たちの鎮魂歌レクイエム』は、それがないんですよ。一応、蘭ねえちゃんは人質という形でいつものごとく命の危機に瀕するけれど、彼女と同時に少年探偵団一行も同じ状況になっているので、さすがのコナンも蘭ねえちゃんだけを心配してはいられない。要するに今回は身内の人質が多すぎるのだ。それ故に蘭ねえちゃんは存在感が薄くなり、新一(コナン)と蘭の絆を描く余裕もなくなってしまった。

 また、「らああああん!」に匹敵する存在ともいえる「新一……」がないのも不満といえば不満。「新一……」は、危険が迫ったり弱気になった時の蘭が発する定番のセリフだ。新一は目の前にいないのに、心が弱った時は1番に思い浮かべて助けを求めてしまう——、蘭の新一への想いを完璧なまでに表す名ゼリフである(名前を呼んでいるだけだけど)。でも今回、蘭ねえちゃんは知らないうちに人質にされ、知らないうちに命の危機に瀕しているため、新一にすがりたいという気持ちがまるで湧いていない。むしろ少年探偵団の保護者代行の役目を果たすことに夢中で、新一のことなんて眼中にないですぅみたいな感じである。「『名探偵コナン』は新一と蘭の物語である」ぐらいの認識を持っている私にとっては、とても物足りない内容になっているのだ。

 劇中には状況を把握している数少ない存在として、灰原哀(林原めぐみ)、服部平次(堀川りょう)、怪盗キッド(山口勝平)などが登場する。コナンの良き相棒、ライバルとして存在する彼らとコナンのやりとりは、それぞれのタッグが好きな人にはたまらないだろうなと思えるほど良いものだった。だけど私が劇場版『名探偵コナン』で欲しているのは、灰原の「工藤くん……」でもなく、平次の「工藤!」でもなく、怪盗キッドの変装でもない。コナンまたは新一による「らああああん!」、もしくは蘭による「新一……」だったんだよ!!!

 コナンとともに事件の謎を追う側になった毛利小五郎(神谷明)が妃英理(高島雅羅)に協力依頼ついでに弱音を吐くシーンとか、灰原のずっとそばにいてねとか、ファンならグッとくること請け合いなシーンもありファン・サービスという視点で見ればかなり健闘している作品ではあると思うが、個人的にはこれまででも1〜2を争うレベルで微妙な作品かも……って感じでした。

ついでに作画ミス

『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』作画ミス
『探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』作画ミス拡大

© 2006 青山剛昌/小学館・読売テレビ・日本テレビ・小学館プロダクション・東宝・TMS

 プラスチック爆弾が仕込まれた腕時計型フリーパスIDを手首に装着しているせいでテーマパークから出られない! って設定なのに、一瞬だけ遠山和葉(宮村優子)の手首からIDが消えているカットがあった。今なら外に出ても大丈夫だよ和葉ねえちゃん!

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