あらすじ:目暮十三、妃英理、阿笠博士が相次いで襲われた。3人の共通点は毛利小五郎と親交深く、名前に十三→13、妃→Queen→12、博士→士→十一→11と数字が入ること。江戸川コナンはこれを連続傷害事件と断定し、今後も小五郎の身内で数字を含む名を持つ者が狙われる可能性を指摘した。容疑者として浮上したのは刑事時代の小五郎に捕らえられ、事件の1週間前に出所していた村上丈。だが、その姿が見えぬままふたたび事件が……。

劇場版でその顔はどうなのコナンくん

名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』に続くコナン映画第2作目。前作は倒叙でもないのに容疑者がひとりだけでミステリとしては面白みに欠けていたが、今作はドッと増えて8人。眠りの小五郎の推理ショーが始まる段階でもまだ5人いるという贅沢さである。そこはかとなく嘘くさい連中ばかりなので、どいつもこいつも怪しく見えてくるのは非常に楽しい。

 反面、トリックらしいトリックはなく、重要な情報の多くは推理ショー中に提供されるため、観客の自力の推理で犯人に辿り着くのはかなり難しいと思われる。構成上のミスってよりは敢えてそうしている風だったね。たぶん観客が推理を楽しむのではなく、江戸川コナン(高山みなみ)が推理する姿を楽しむものと割り切って作ったのだろう。屍体や殺害シーンの演出はかなり良かったので、ミステリよりもサスペンス寄りで作りたかったのかな。こういう作りもありっちゃありなのかな。

 でも個人的にはそういったミステリ的な欠点よりも、全体的にいまいちコナンっぽさに欠けることの方が気になった。最初に引っかかったのは元太(高木渉)が言ったここ、ヘリコプターの模擬操縦もできるらしいぜのセリフ。まだ小学1年生であり、なおかつその年齢でもちょっと頭が悪い設定の元太がサラリと「模擬」と口にするのは少なからず違和感が出る。さらにそのあと「目暮十三」をめぐれじゅうさん……?と読むのも「『模擬』を知っていたのに下の名前の『十三』をストレートに『じゅうさん』って読むか?」と首を傾げたくなる。

 とは言えこれくらいなら目を瞑れるけれど、すぐにお父さんを信じられなくなった毛利蘭(山崎和佳奈)はとてもじゃないが受け入れがたい。今回は蘭の両親である小五郎(神谷明)と妃英理(高島雅羅)の回想話がある。それはまだ小五郎が刑事だった頃。殺人犯の村上丈(鈴木英一郎)が偶然居合わせた英理を人質に取った時、小五郎は構わず銃口を向け、結果英理の脚に傷を負わせた。小五郎が英理の命よりも犯人確保を優先したと訝った蘭はいくら(銃の)腕に自信があるからって、わたし、もうお父さんのこと信じられないと嘆く。

 ——のだが、蘭ねーちゃんってそんなにアッサリ小五郎を見放す(?)キャラクターだっけ? なんだかんだ言いつつも小五郎をフォローしている印象が強いし、こういう時にも「きっとお父さんにも何か考えがあったのよ!」とか言うと思うんだ。実際、小五郎は人命を軽視するような人間じゃないしね。へっぽこではあるが殺人犯には怒りをあらわにすることも多いし、それは「同窓会殺人事件」で発せられたどんな理由があろうと…殺人者の気持ちなんて…わかりたくねーよ…のセリフから見ても嘘偽りない感情であるとわかる。そうした小五郎を間近で見てきたはずの蘭が秒速で不信感を抱くさまには、どうしても違和感が拭えない。

 終盤では昔の小五郎をコナン(工藤新一)、昔の英理を蘭に置き換えたシチュエーションが発生し、それによって小五郎が英理を撃った理由が判明する。が、その理由からすると、人質に取られた時点で体力を使い果たしていた蘭を撃つ必要はないのでは。というか犯人も人質にしないでしょう。蘭は普通に人質になっても自力で抜け出せちゃうキャラクターだから苦肉の策でこうなったのだろうが、小五郎と英理のエピソードってそんなに無理して入れなきゃいけないようなもんだったのか……?

 ちなみに『14番目の標的ターゲット』はのちに劇場版で多用される「親父にハワイで教わった」設定が初めて出てくる記念すべき作品でもある。今回教わったのは拳銃の撃ち方だが、いくら教わったと言っても小学生の身体になっている今、習得した通りに拳銃を扱えるのか甚だ疑問。そもそも平均的な小学1年生の手の大きさで引き金を引けるのか。それに高校生に拳銃の撃ち方を教える親父もどうなん。正確に射撃できるまで教えてたってことは結構長期間レクチャーしただろうし、下手すれば中学時代からということも……。どーんな親父だよ。でも銃社会な国では中学生が親父と射撃場に行くのもそんなに珍しいことじゃないのかなあ。

 作画がちょっと荒れ気味なのも気になった。スケジュールが押していたのか知らんが、中盤から——特に終盤、絵・動画・色数いずれも簡略化が激しい部分がちらほら見える。1990年代のアニメにはぼちぼちこんなもんもあったろうとは思うが、劇場版でここまでのものはなかなか……? 少なくとも今やったら作画崩壊とかやいやい言われるレベルではあるだろう。ラストのコナンくんなんか、ほら。

『14番目の標的(ターゲット)』のラストシーン
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© 1998 青山剛昌/小学館・読売テレビ・ユニバーサル ミュージック・小学館プロダクション・東宝・TMS

 英理を人質に取った村上のこの女と、地獄の果てまでランデヴーだ!とか、蘭を人質に取る犯人に向かって白鳥刑事(塩沢兼人)がへっぴり腰になりながら発した蘭さんを離せェ、離さないと撃つぞォ↑?など面白いところもあったけど、総合的には雑な印象は否めない。『—時計じかけの摩天楼』の方が好きだな。

追記

 このエントリを書き終わったあとコミックスをパラパラと読み返していたら、11巻で小五郎が衝撃的な発言をしていた。

小五郎「いやー、私は元刑事といっても、拳銃の方はあんまり…」
© Gōshō Aoyama 1996

 おっちゃん、拳銃の腕はあんまりだった(笑)。やっぱり『名探偵コナン』らしさはあまり重視しない方向で作ったのかなあ。

劇場版 名探偵コナン 14番目の標的

オフィシャルDVD(Blu-rayも有)

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last up:2018/06/05