あらすじ:怪盗キッドから舞台女優・牧樹里に、彼女が所有する指輪・スター・サファイアを狙うとする予告状が届いた。牧から相談を受けた毛利小五郎は、彼女の主演舞台『ジェゼフィーヌ』の千秋楽にキッドが犯行に及ぶと予想。江戸川コナンは小五郎や蘭とともにキッドの犯行を防ぐために舞台に向かう。そこで一行を待っていたのはキッド逮捕に人生を賭ける中森警部と、対キッドの協力者として招かれた工藤新一だった!?

サービス精神旺盛すぎてまとまりがない

名探偵コナン 迷宮の十字路クロスロード』に続く劇場版第8弾。人気キャラクターの怪盗キッド(山口勝平)が『—世紀末の魔術師』以来4年ぶりに登場する作品。また、今作から劇場シリーズの監督がこだま兼嗣から山本泰一郎にバトンタッチしている。オールデジタルの作画としては2作目だけど、今回も冒頭の「『名探偵コナン』のおさらい」の作画がちょっとだけバージョンアップしている。コナンファンにはあまり人気がない作品で、私もちょっと微妙だと思った。

 まず怪盗キッドを工藤新一(山口勝平)に化かして登場させたのが良くない。もちろんめちゃくちゃ驚いたけど、なぜここで驚くかと言うと『名探偵コナン』は基本的に生身の新一は登場できない設定だからである。いくらキッドの仮装とは言え、新一が出てくることは『—コナン』の根本的な部分をひっくり返すレベルの大挑戦なのだ。そこまで大きなことをするのであれば、それ相当の意味合いやカタルシスを感じさせてほしいのだが、映画からはそれを感じられなかった。ただ「観客がびっくりするだろう」ぐらいの気持ちで出したようにしか見えない。新一はそんな生半可な気持ちで出して良いキャラクターではない。

 偽新一が登場した時のキャラクターの反応が薄すぎるのも良くない。特に新一と友達以上恋人未満の毛利蘭(山崎和佳奈)。新一と蘭はお互いを想い合っているが、新一が江戸川コナン(高山みなみ)の姿になってしまったことから、長い間会えないでいる。新一の方はコナンとして毎日顔を合わせているけれど、蘭の方はコナンの正体を知らない。だから蘭は何日も新一に会えない寂しさを抱えていて、再会した時にはひどく感傷的になるのがお約束だ。でも今回の蘭はそうではない。いくらキッドの仮装の新一とは言え、あの道端で偶然出くわした程度の反応はなんなのか。そら最初から感傷的になったら映画が終わっちゃうかもしらんけど、その辺を上手く消化できないのなら初っ端に新一を出すべきではなかったと思う。

 事件がめちゃくちゃしょぼいのも残念ポイント。事件は1件だけだし、トリックもしょっぱいし、サスペンス性もゼロ。容疑者らの人物像に深く切り込むこともなく、あっと言う間に解決してしまう。スケールがテレビアニメレベル。しかも1時間のスペシャル番組レベルでもなく、普段の30分——CMを考慮すると実質20分前後——のテレビレベル。実にしょぼい。なぜこんなにもしょぼくなってしまったのか?

 おそらく今作のテーマがキッド×パニック映画だったからだろう。人気キャラクターの怪盗キッドをカッコよく見せたい。パイロットを失って墜落の危機にある飛行機で『大空港』ばりのパニック映画をやりたい。そちらに注力するあまり、ミステリを入れる余裕がなくなってしまったのだろう。ミステリなんて最初からオマケやったんや!

 さらに困ったことに、キッドもパニックもさして面白くない。キッドについては先に書いた通り新一に化けるのが却って面白くない。その後の活躍も微妙だったし。パニックについては画面に無理がありすぎる。パイロットを失った飛行機を操縦するのは当然のようにコナン・キッド・蘭・鈴木園子(松井菜桜子)なのだが、いくら君ら(園子除く)がスーパー高校生と言ってもジャンボ機は無茶だ。『—14番目の標的ターゲット』のヘリコプターでも厳しいのに、ジャンボ機て。開いた扉の前で平然と立っているのも不自然さが半端ない。飛行中のジャンボ機の扉が開いてんねんで? 普通に考えてお空に放出されてお陀仏やろ。フィクションだからでは済まされない不自然さ——というよりは、脚本・演出・テンポが良くないせいでフィクションと割り切って楽しめないのか。とにかく、ありえへんやろ! って突っ込みたなる映像の連続やったで、工藤。

 劇場版お馴染みの新一と蘭の絆の再確認シーンもむちゃくちゃ。ジャンボ機の操縦を任された蘭は当然のごとくプレッシャーを感じて弱音を吐くので、コナンが元気付けようと(?)新一を装って機内電話から電話をかけるのね。新一の声を聞いた蘭はいつもあたしだけおいてけぼり……あたしのことなんだと思ってんのよ……あたしは……あたしは好きだよ、新一……とドサクサに紛れて告白するのだが、意味がわからん。あたしのことなんだと思ってんのよから好きだよ、新一の繋がりがよくわからない。まったくノれなくて思わず「は?」って言った。そのあとの蘭ねーちゃんが急にキビキビとジェット機を操縦するのもめちゃくちゃや。新一とちょっと喋っただけで……。もう声を聞いたら妊娠するレベルで好きじゃん。手を繋いだら爆死。

 今回は初っ端からキッドが新一に化けて出てきたせいか、コナンが子供ぶるところがほとんどないのも変な感じ。遺体からアーモンド臭がするとか平気で言うし、ジャンボ機の残りの燃料から飛行時間を計算したり、道路交通法(?)の知識を披露しても誰も突っ込まない。いくら偽新一とコナンが同じ空間にいたと言っても、何かしら怪しがるには充分すぎるだろう、これ。どこの世界に小学生のガキを操縦席に座らせる奴がいるんだ?とはコナンのセリフだが、この世界ならオメーは座り放題だろと思った。

 妃英理(高島雅羅)を探偵役にする展開や蘭と園子の取ってつけたような友情描写もそうだが、なんの脈略も意味もない唐突なシチュエーションが多すぎる。それは切り取って見ればコナンファンがびっくり&感動するシチュエーションではあるのだが、物語に馴染んでいないせいで全体的に見るとツギハギ感がすごい。観客を喜ばせようというサービス精神が強すぎるあまり、あれもこれもと詰め込みすぎてまとめきれなかったような印象。描き込みすぎて読みづらくなった漫画みたいだった。

 そういや今回初めてこの作品はフィクションですの注意文が出てきたけど、やっぱりジャンボ機の描写のせいだろうか?

大空港

アメリカの飛行機パニック映画

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last up:2018/06/19