実写版 CAT'S EYE

公開

あらすじ:夜の街に現れた3つの影。それは数えきれないほどの警察官に囲まれた美術館に忍び込み、厳重に守られていた1枚の絵画を奪い取って姿を消した。3人の名はキャッツ・アイ。美術品専門の窃盗集団である。その正体は、喫茶・Cat's Eyeを運営する来生泪・瞳・愛の美人三姉妹。彼女たちは生き別れた父の消息を探るため、父が描き残した絵画を手当たり次第に集めているのだ。大胆不敵な活動で世界中から注目を集めるキャッツ・アイは、やがて国際的な犯罪組織・紅龍団に狙われる存在となる——。1981〜1984年に週刊少年ジャンプで連載され、テレビアニメも大ヒットした人気漫画『キャッツ♥アイ』の実写化作品。

狙った獲物がわからない

 北条司の『キャッツ♥アイ』といえばモンキー・パンチの『ルパンIII世』と並ぶ怪盗漫画の金字塔である。その影響力は連載終了から30年以上経った現在も色濃く残っており、現実の女性窃盗犯が“キャッツ・アイ”と呼ばれることもあるほどだ。2020年1月にも25歳と22歳の女性2人組が窃盗と建造物侵入の容疑で逮捕された際の報道では、捜査の過程で容疑者が女性2人組であると知った刑事たちが彼女らを「令和のキャッツ・アイ」と呼んでいたと書かれている。

 それぐらいのスケールのヒット作だから実写化されていても不思議はないが、私はつい最近まで実写版のことを知らなかった。その存在を知ったのは、映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』の完成披露試写会の様子を報じた記事だ。記事では原作者の北条司が同作に太鼓判を押す一方、過去に公開された自作の実写版への不満を吐露したとある。

これまでさまざまな形で自身の作品が実写化、アニメ化されてきた北条氏は「いやだと言っても(実写化)されたこともある」とポロリ。「強力な出版社が、ね。“人気があるから実写化したい”じゃなくて、ラショーさん(引用者注:『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』の監督・フィリップ・ラショーのこと)のように“シティーハンターが好き”っていう人が(制作サイドに)いないと、ちゃんとした作品にならない」と大人の事情をまじえながら、成功・失敗の分かれ目を分析した。

 さらに北条氏が「これまで実写化した作品と言えば…」とさらに踏み込むと、あわてて司会者が制止。あの三姉妹が登場する映画のタイトルが出る“事故”を何とか未然に防いでいた。

北条司氏 本当は実写化がいやだった作品は…司会者があわてて制止/芸能/デイリースポーツ online

 完全にツッコミ待ちの書き方である。しかし私はそれよりも「『キャッツ♥アイ』って実写化してたんだ」という意外性の方が強かった。この記事からすれば駄作として知られているようだが、『CASSHERN』や『デビルマン』のように語り継がれている(?)感じもない。実際のところはどうなのかな? そんな風に興味を持った結果、今回観賞に至った。

 物語が始まると最初の2分ほどはアニメ・パートだった。アニメ版の『キャッツ♥アイ』を制作したトムス・エンタテインメントや東京ムービー系の会社が担当したようで、アニメーションの出来はとても良いのだけど、声優はどこかぎこちない。それもそのはず、声を当てているのはアニメ版の声優ではなく実写版の役者——藤原紀香・稲森いずみ・内田有紀——なのであった。

 まずこの演出の意図がよくわからない。いやね、最初は漫画原作でかつアニメ化により人気が爆発した作品だからファン・サービスでのアニメ・パートなのかなと思ったんだけど、それなら声もアニメ版の人でいいじゃんって思うんだよね。アニメ版の声を使うとこのあとの実写パートで混乱を招きかねないからかな? とも思ったんだけど、それならそもそもアニメ・パート作らなきゃいいじゃんって思うんだよね。

 しかもこのアニメでのキャッツ・アイ、衣装が全然違うんだよね。原作・アニメではレオタード姿で活動しているけど、ここだと猫耳を模した被り物とマスクで顔を覆い、全身真っ黒な衣装で身を包んでいる。なぜかというと、実写版の彼女たちの衣装がまさにそれだからである。

実写版のキャッツ・アイ(来生愛)

© 1997 フジテレビジョン/バーニングプロダクション

 ジャキーン! と拳から飛び出る謎の武器も装備。こんなんアニメにあったっけね。まあアニメを観たのはウンと昔のことだし原作は読んだことがないから、もしかしたらあったかもしれないけれど。あの三姉妹、こんなん常備するほど好戦的だったか? という気持ちは拭えない。たまにカードを投げる程度だった気がする。

 そして、やたらにニャオーンとか言う。こんな鳴き声あったっけ? と思って一応YouTubeでトムスが公式配信しているアニメ版の第1話を観たけれど、一言も言っていなかった。これももしかしたら話が進むうちに出てくるのかもしれないけど、こんなに露骨に猫推し(?)だったか? という疑問はどうしても拭えない。身体もやたらにクネクネさせて猫っぽさをアピールするし、“CAT”の単語に引っ張られすぎじゃないかと思う。

 映画はわりとアクションを見せたいっぽい感じがあり、序盤のカーチェイスでは『西部警察』ばりにパトカーが跳ねたりする。しかしアップダウンのない平坦な道で跳ねたりするので迫力を感じる前に不自然さを覚える。キャッツ・アイの特別仕様の車——? 途中で電気自転車っぽくなるのでよくわからない——の動きもすごくショボい。車体が相当軽いらしく、路面の凹凸の影響をモロに受けてカタカタいわせながら走っている。まるでチョロQだ。

 生身のアクションも微妙で、やたら飛んだり跳ねたりするけど、そうする理由というか流れが全然見えない。突然やりだすんだよね。だから、ほらどうだ、身体能力すごいでしょ、って自慢したいだけみたいになってる。敵役として出てくるケイン・コスギなんかは特にすごいんだけど、動きが頭ひとつ飛び抜けているせいで対峙する相手がめっちゃトロく見えてしまう。最後に愛(内田有紀)と対決するとこなんか完全に内田有紀(? スタントさんかも)を置いてけぼりにしているのにさも対等かのように描いているため逆に絵面がチャチくなってるのね。

 もっとも、絵面の点で言えば全体的にかなりチープだけれど。敵対する中国系の犯罪組織・紅龍団のボスはいかにもステレオ・タイプな格好だし、下っ端は『キン肉マン』のラーメンマンみたいな髪型でもはや失笑レベル。この映画が公開されたのは1997年。時代的に漫画やアニメの地位なんか大したこともなかったし、適当にやってりゃいいだろうってところがあったのかなと疑うぐらいにチープである。挙げ句の果てに紅龍団が狙う龍玉とやらがあるアラブ系の組織・キング財団のアジトは孤島に浮かぶフジテレビ。

孤島のフジテレビ

© 1997 フジテレビジョン/バーニングプロダクション

 誰向けのサービスやねん! しかしよくよく考えると、これは本作を象徴するカットのようにも見えてきた。キャッツ・アイは狙った獲物を逃さない怪盗だが、彼女らを実写化したこの映画の獲物(客層)はなんだったのか、さっぱりわからねえよ! ってね。

 一方で、『CASSHERN』や『デビルマン』のように何年経ってもアレコレ言われる存在にならなかったことはなんとなく理解できた。『CASSHERN』は酷評される反面、愚直なメッセージ性や当時まだ日本で発展途上だったCGをふんだんに使った演出で少なくない観客に感銘を与えたし、『デビルマン』はあまりにも突き抜けたダメっぷり(……)で逆に今なお度々話題に上がる作品ではある。しかしこの『CAT'S EYE』は優れた部分——個性的な部分というべきか?——は特に浮かばないし、かと言って『デビルマン』ほどツッコミどころもないので、語るところがほぼないのだ。言えることといえば「なんか……おもしろくないね……」ぐらいなものである。

 この感想を書くのにも2週間くらいかけてしまったわけだけど、結局のところ言いたいことは「なんか……おもしろくないね……」だ。嫌がる作者をねじ伏せて(?)まで実写化したのに、なんでこうなっちゃうんだろう?

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