あらすじ:両親と獣たちに囲まれて穏やかな日々を過ごしていた安寿と厨子王丸の姉弟。だが、父が無実の罪によって都に連行されたことから生活が一変。追われるように家を捨てた一行は父を求めて旅に出るが、道中で人買に騙され、姉弟は母と別れ別れに。山椒大夫に売られたふたりは奴隷として過酷な労働を強いられるが……。

今なお色褪せぬ劇場アニメの傑作

 東映創立10周年記念作品。『白蛇伝』と同じく日本初のテレビアニメ『鉄腕アトム』の放送開始以前のもので、『白蛇伝』と共通したスタッフも多い。本作が公開された当時、劇場に観に行ったという人が身近にいるのだが、その人が「とても綺麗なアニメで衝撃を受けた」と話していたため、ずっと気になっていたのだ。結論から言えば実によくできたアニメだった。

 とにかく良かったのは『白蛇伝』と比べて「ディズニーのパチもん」くささがかなり減っていたことだろう。これは題材が日本の説経節であることと西洋的なミュージカルシーンがほぼないことも大きいと思うが、それ以上にアニメーションの中にあるゆったりとした静けさ——と同時にどこか力強さもある空気感に、のちの日本アニメ的なものがあるからではないかと思う。

 ナレーションをほぼ入れず、またセリフや声も無駄に出さず、純粋に画で魅せようとする姿勢もとても素晴らしい。安寿が湖に向かうシーンは非常に王道——悪く言えばベタではあるが、それをしっかりと描ききっていたため、私はあっさりと胸を打たれることになった。

 しかし宿敵である山椒大夫を無罪放免にしてしまったことは、どうにも腑に落ちない。子供向けということを考えて道徳的に作ろうとした結果なのかもしれないが、しかし中盤に登場した人買にはしっかり復讐しているのである。憎っくき仇を片や復讐・片や赦免とすれば、教育上もエンタメ上もあべこべだ。しかもこの復讐シーンがなまじ素晴らしいから、ラストにはより壮大なクライマックスが待っているに違いない——と大きな期待感を抱かせてくるんだよね。その末にあれでは肩すかしだ。

 そうは言ってもラストシーンは素直に美しいと感じたし、今日の視点から観ても充分楽しめる傑作であることは間違いない。『白蛇伝』に触れた人にはぜひ観て欲しい1本である。

どうでもいい追記(2018年1月4日)

 この作品のAmazon.co.jpのレビューを見ていたら1960年代の日本は、家電、車などその全てがアメリカに習い模倣したものばかり。それを知らない無知な若者が「ディズニーのパクリ」などと言っているが、無知を曝けまた物を図る知識経験の無さをさらけ出すようなものと書いている人がいた。もしかしたらこのページを見て書いたのかもしれないので言っておくけど、当時の日本がアメリカに強い影響を受けていることぐらい知ってます。でも同じくディズニーの影響をバリバリに受けている手塚治虫が作ったアニメ『鉄腕アトム』は『安寿と厨子王丸』くらいディズニーの影響がモロに出ているかというと、そんなことはない。金と時間がないせいで技術を出し切れなかったからである。しかし『安寿と厨子王丸』にはディズニーの影響をモロに出せるほどの金と時間、そしてなによりも技術があった。しかしそれゆえに、環境に恵まれない中で進化していったのちの日本アニメ的な要素は薄いよね、という意味で「ディズニーのパチもんくさい」と書いたわけです。汲み取れませんか、これ?

 つーか1960年代の日本は、家電、車などその全てがアメリカに習い模倣したものばかりと認めるってことは、結局これが「ディズニー(アメリカ)のパクリ(模倣)」って意見自体には反論できてないと思うんですけど、なぜ無知を曝けまた物を図る知識経験の無さをさらけ出すようなものになるのかわからない。「当時の日本はアメリカの模倣が当たり前だったんだから、わざわざパクリとか言わなくて良いの」ってことなのかもしらんけど、そんなもん傲慢・逆ギレとしか思えないです。

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last up:2017/08/18