あらすじ:明かりの灯る不審な売家“17番地”に足を踏み入れたフォーダイトは、その上階でホームレスの男性・ベン、生き絶えた刑事らしき男性、隣の15番地に住む若い女性と出会う。女性は“M No.17 12-30”と書かれた札を残して消えた父を探しに来たという。フォーダイトはこれを“12時半に17番地で何かが起こる”とするメッセージだと推測するが……?

メイキング

 1931年の年末、ヒッチコックはブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャーズのプロデューサー・ジョン・マックスウェルからJ.ジェファーソン・ファージョンの戯曲『第十七番』の映画化を依頼された。この話にヒッチコックは失望した。彼が撮りたかったのはジョン・ヴァン・ドルーテンの戯曲『ロンドン・ウォール』だったのに、それが叶わなかった上に、代わりに押し付けられた作品は到底面白いとは思えなかったからだ。

 この気に入らない企画を面白くするために選んだ方法は、コメディ色を強めることだった。例えばこの映画はスリラーだが、スリラーものに登場するヒロインはまぬけ(dumb)なのがお約束なので、いっそのことヒロインを口がきけない(dumb)設定にしよう——とか、スリラー定番の追跡劇をしつこく強調してバカバカしさを演出しよう——など、風刺じみた笑いを取り入れようとしたのである。しかしそれを詰め込みすぎたせいか、完成した映画は——フランソワ・トリュフォーの言葉を借りればちょっとゴタゴタしすぎている※1ものになってしまった。映画は1932年に公開されたものの、批評家はおろか一般客にもまったく評価されなかったという。

逸話

カメオ出演シーン

なし

管理人より

 英国時代のヒッチコックの低迷期の作品。『十七号』や『十七番地』とも呼ばれる。原作に興味がなく、やる気も起きないという監督の虚無感が著しく反映されている映画である。他のヒッチコック・ピクチャーではしつこいほどにピックアップされる登場人物の感情は驚くほどにスルーされる上、人物の設定が二転三転するので彼らに共感するのが難しい。観客の感情を揺さぶることにこだわっていたヒッチコックが作ったとは思えないほどに、ヒッチコックらしさが欠如している。

 サスペンスとしてもコメディとしても空回りしている感じは否めないが、汽車に舞台を移してからの展開には『バルカン超特急』を、状況が二転三転するドタバタさは『北北西に進路を取れ』を連想させるところがあり、“のちのヒッチコック・ピクチャーの習作”と思えなくもない。また、後半のミニチュアを駆使した追跡シーンもなかなかの迫力があるため、まったくの無駄な作品というわけでもないだろう。全盛期のヒッチコック・ピクチャーはだいたい観賞したかなという時になって、原点を振り返るつもりで観ると面白いかもしれない。

スタッフ&キャスト

配役

第十七番

パブリックドメインのDVD

出典

※1…フランソワ・トリュフォー(山田宏一 蓮實重彦 訳)『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー(改訂版)

※2London Wall (play) - Wikipedia

last up:2019/03/31