あらすじ:カトリックの神父・ローガンは教会で働くドイツ移民のケラーから人を殺めたと告白される。生活が苦しく、知人のビレット宅に盗みに入ったところ口論になったためだという。彼は現場から立ち去る姿を目撃されていた。だが、変装として法衣姿を着用していたことから、警察は神父による犯行との見方を強める。容疑者のひとりとなったローガンに“告白を他言してはならない”というカトリックの掟が重くのしかかっていく。

メイキング

『私は告白する』の原作は、1902年にフランスの作家・ポール・アンテルメが執筆した戯曲『わが二つの良心』である。アンテルメの死後、劇作家のルイ・ヴェルヌイエが作品の権利を買い取って映画用の草稿に手直しし、ヒッチコックに売り渡した。その後長らく手付かずのままだったが、1952年2月にヒッチコックの妻のアルマがこの作品に再注目したことから映画化計画が始まった。

 主演は『陽のあたる場所』などで知られていた美男子・モンゴメリー・クリフト、その相手役はスウェーデンの女優・アニタ・ビョルクに決定した。ビョルクはアルフ・シューベルイの映画『令嬢ジュリー』に出演して国際的な評価を得ており、ヒッチコックは本作で彼女を使いたいと思っていた。ワーナー・ブラザースは彼の希望に応えるべくビョルクをスウェーデンからハリウッドに呼び寄せた。

 だが、彼女が不倫中の愛人とその間にできた子供を連れてやってきたのを見た途端、考えを改めた。彼女の姿は、夫と娘を捨ててイタリアの映画監督・ロベルト・ロッセリーニと駆け落ちした女優・イングリッド・バーグマンと完全に重なっていたからである。バーグマンの不貞スキャンダルは全米中の顰蹙を買い、彼女は数年に渡ってキャリアを中断せざるを得なくなったほどだった。奇しくも、バーグマンはビョルクと同郷でもあった。

 当時はまだバーグマンのスキャンダルが記憶に新しい時期で、ふたたび大衆の顰蹙を買うことを恐れたワーナー・ブラザースの意向により、ビョルクの起用は断念された。代わりにヒロインを演じることになったのは『剃刀の刃』でアカデミー助演女優賞を受賞していたアン・バクスターであった。バクスターはヒッチコックの映画『救命艇』に出演したジョン・ホディアクの妻で、プライベートでもヒッチコックと親交を持っていた女優だった。だが、ヒッチコックは女優としてのバクスターをあまり評価していなかったため、この変更には喜びを感じなかった。

 しかし撮影現場でヒッチコックを苛立たせたのはバクスターよりもクリフトの方だった。彼はヒッチコックが嫌っていたメソッド演技(※内面から役の人物になりきることを美徳とした演技)を採用した役者だったし、監督よりも自分の演技コーチだったミラ・ロストーヴァのことばかり気にするので、ヒッチコックは疲れてしまった。

 完成した映画は1953年2月に公開された。アメリカやイギリスでの評価はイマイチだった反面、ヌーヴェルヴァーグの批評家の間での評価は高く、興業的な失敗も免れた。

逸話

カメオ出演シーン

ヒッチコックのカメオ出演シーン
冒頭で階段の上を歩く人

管理人より

 ヒッチコックはサスペンスに専念する以前はメロドラマのようなストーリーを題材に作品を撮ることが多かった。本作はその名残とヒッチコック最盛期のサスペンス性を兼ね備えたかのような内容になっている。しかしメインテーマである宗教とメロドラマの要素があまり溶け合っていないきらいがあり、サスペンスとしてもラブロマンスとしても多少中途半端な印象を覚えるのは否めない。

 ヒッチコック本人もこの映画の出来に満足していなかったらしく、一般的な評価も高いとはいいがたい。しかし私はこの映画に対してなかなかの愛着を感じている。モンゴメリー・クリフトとアン・バクスターの美男美女からなるロマンスは観ているこちらが恥ずかしくなるくらいにロマンチックだし、“カトリック(宗教)の掟”を活かしたサスペンスも見事な出来映えだからである。とくにクリフトと十字架が交互に映るカットは、ヒッチコックらしさが全開で素晴らしい。

 ほかの傑作の影に隠れがちではあるものの決して駄作ではないので、ヒッチコック・ファンはもちろんサスペンス好きの方にもぜひともおすすめしたい1本だ。

スタッフ&キャスト

配役

私は告白する [Blu-ray]

オフィシャルBlu-ray(DVDも有)

last up:2019/04/17