The 鑑識官〜緊急出動!事件現場をタッチせよ!〜

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ゲーム概要:トムキャットシステム開発・D3 Publisher発売のニンテンドーDS用のゲームソフト。南東京科学研究所——科研——に所属する女性鑑識官・江波識子が、江波家の先祖で江戸時代同心の幽霊・査之介と江波家に住み着く猫又・鑑太、そして科研や警察組織の仲間たちとともに事件に挑むミステリゲーム。

シンプル版『逆転裁判 蘇る逆転』

 “The—”から始まるタイトルで安価なゲームを多く発表していることで知られる『Simpleシリーズ』のひとつ。『The 鑑識官』は2005年にプレイステーション2用ソフトとして第1弾が発売されていて、今作はその続編にあたるらしい。謎解きだけでなく、一般的にイメージされる鑑識官の仕事——現場や証拠に粉を叩いて指紋を浮かび上がらせる“指紋採取”などをDSのタッチペンを使って擬似体験できるのが特徴である。こういうシステムを採用したゲーム、これ以前にもあったよね。

 2001年にゲームボーイアドバンス用ソフト『逆転裁判』のシリーズ第1弾がニンテンドーDSに移植する時に追加された新シナリオ「蘇る逆転」。これもタッチペンを利用した指紋採取を行いながら捜査を進めていくゲームだった。また、本作には主人公のご先祖様の幽霊がメインキャラクターに出てくるが、『逆転裁判』シリーズのメインキャラクターにも霊媒師がいる。シリーズの発表もタッチペンを使った指紋採取も『逆転裁判』の方が先なので、多かれ少なかれそれを意識して作られたゲームなのだろう。『Simpleシリーズ』って安価がウリのゲームシリーズだけど、プレイの実感もまんま“安価な『逆転裁判』”って感じ。グラフィックは背景(写真を加工したものがメイン)に立ち絵のキャラクターが表示されるのみ。背景・キャラクターともにあまり種類が豊富でなく、似たような風景が続きがちなのでプレイしているとマンネリ感を覚えるのは否めない。

 また、プレイヤーへの情報提供が不十分な状態で謎解きを要求してくる機会が多いのも不満。例えばある章では崖から飛び降りた人が遺したと思われる靴が出てくる。それを見た主人公は違和感があるとつぶやくが、その違和感の理由をプレイヤーに明示してくれない。グラフィックでもごく普通の靴が映っているだけだ。その後、あの現場には不審な点があるから自殺は偽装だと主張する主人公に、同僚がどこが不審なのかと問いかけ、プレイヤーに証拠を示すよう促す。流れ的に靴を選択すれば良いことはわかるが、なぜ不審なのかはわからないまま選択することになる。そして靴を選択したのち、主人公は言う。「険しい崖を登ってきたにしては靴が綺麗すぎます。見てください、同じ崖を登った私の新品の靴は傷だらけです」。いや、知らねーよ!(笑)

 恋愛ゲームとかならともかく、これは推理ゲームなのだ。「よくわかんないけど、流れ的に正解はこれっぽいからこれを選択しておこう」みたいな曖昧な形でなく、ちゃんと正解になる所以を推測した上で選択したいのだ。だから、険しい崖ね……新調した靴も傷だらけになりそうだわ→ピカピカの靴の絵→崖を登りきる→やっぱり靴が傷だらけになったわ→ボロボロの靴の絵→崖の上で自殺者の遺品と思われる靴を発見→ピカピカの靴の絵→あれ、この靴どこか違和感が……? とかそういう感じで、事前に違和感の理由を示唆してくれないとミステリ的に面白くない。だって勘で選ぶって事件を解決する上で1番やっちゃダメなことじゃん。でもこのゲームは情報が少なすぎる、勘で行くしかねえって場面が多かった。それで正解しても爽快感がないんだよね、やっぱり“勘”とか“流れ的に”で選んでるから、あ、これで合ってたの、ふーん……ぐらいなもん。

 間違うとペナルティを受ける選択もあり、ペナルティが一定数溜まるとゲームオーバーになってしまう。だから現時点でペナルティがどの程度溜まっているのか確認しながらできると良いんだけど、それがちょっと難しい。『逆転裁判』ではペナルティを受けるたびにゲージが現れたけど、『The 鑑識官—』だとわざわざ所長室に行って所長にお伺いを立てないといけない。しかもそれがゲージとか明確なものでなく、所長のセリフの変化で判断する必要があるという。面倒くさいから所長にお伺いを立てることはほとんどなかった。そのせいかガンガンゲームオーバーになったし、クリア後の評価はズタボロであった。まあノーミスでのクリアにこだわりはないから良いんだけどね——と思いきや、一通りやり終えたあと“全シナリオをノーミスでクリアしたら出現するおまけシナリオ”の存在が発覚。結局1話目からやり直すハメになったとさ。

 でもシナリオの出来は悪くなく、2巡目もそれなりに楽しんでプレイできたくらいに良い。ただ児童向け小説みたいな内容の事件が多いから、ミステリファンには物足りないところがあるかも。死体の絵もほぼ出ないし。まあお子さんでも安心してプレイできると考えれば利点でもあるのかな? キャラクターも明るくて楽しい性格だし、勧善懲悪的なストーリーも子供向けかも。デザインについては好みは分かれるかも。ネットで“女性の胸が強調されすぎててちょっと……”というレビューも見たけど、そう感じる気持ちはわかる程度に胸は大きいし多少露出もある。でも私は好きですね(たぶんオタクだから抵抗感がない)。主人公の識子を始め、指紋課のシモーヌ、警察官の寒川と、大人の女性キャラクターはだいたい魅力的だった。中でも識子の伯母上で南東京市警察署署長の徹子はデザインも設定もドンピシャである。

『The 鑑識官』江波徹子

© 2006 Tomcat System © 2006 D3 Publisher
画像はニコニコ動画でゲーム実況をされているdarumadaさんの『【積みゲー実況】週末は先祖と証拠をタッチ!【THE鑑識官】Part29』から引用

 識子は20代前半だから、その伯母上ってことは若くても40代だよね? 出世頭だけあって堅い雰囲気を纏わせているが、確実に人が良いことを感じさせるデザインが秀逸。そのガワで識子に向かってじゃあね♪ハグレモノのお嬢さんなどと言い放つのだ。これはあきまへん。元々は『The 推理』シリーズのキャラクターらしいけど、徹子さん目当てにそっちもやりたくなってくるくらい惚れた。

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