2018年12月25日のクリスマス。朝日新聞DIGITALで衝撃的なニュースが表示された。『サザエさんの初回をデジタル化 カツオの声は大山のぶ代』がそれである。『サザエさん』は押しも押されぬ日本の国民的アニメだが、これまでにLD・VHS・DVDなどの映像記録媒体(?)で販売されたことが1度もない。また、再放送もかなり消極的だ。伝聞なので定かではないけれど、これは作者・長谷川町子の意向だったらしい。『サザエさん』の放送開始はLD登場以前で、現在のように一般家庭で気軽に映像作品を保存できる手段がなかったため、ほとんどの人は初期の『サザエさん』を観られない状態にあった。その『サザエさん』が動画配信サービスで配信されるというニュースは、日本アニメ史上に残る大事件と言っても過言ではないのだ!(たぶん)

さっそく拝見いたす

 上述のように『サザエさん』は基本的に再放送がないアニメだが、私の記憶が確かならば第1話「75点の天才!」は再放送されたことがある。詳しいことは忘れたが放送開始ナン周年かなんかの記念で、現在の『サザエさん』と同じようにゴールデンタイムに放送されたはずだ。しかし、その時はところどころで音が飛んでしまっていた。これはフィルムやデータの劣化とかではなく、放送禁止用語を消すための処理であることは明白だった。該当箇所は“犬とおっちゃんに絡まれて(?)ボロボロの姿になりつつも超ご機嫌に歌い踊るカツオを見て驚くサザエのセリフ”である。私の記憶が確かならば、それはこんな感じであった。

唖然とするサザエ
© 長谷川町子美術館

まあ!(消音)かわいそうに、きっと自動車に撥ねられて頭がおかしくなっちゃったんだわ

 これはもう明らかに「き——」の類いである。現在「き——」の類いは放送禁止用語だが、「75点の天才!」が放送された1964年当時はまだ大丈夫だったのだろう。でも再放送された時にはもうダメだったのだ。一般的に「き——」の類いがNGになったのは1970年代半ばとされているらしい。私が観た再放送は1990年代か2000年代のはずなので、時期的に考えてもやっぱり消された言葉は「き——」の類いで間違いない。

 この手の消音処理は映像ソフトになると解禁されることも多いが、映像配信だとどうなるんだろう? さっそくAmazon Primeで確認してみるぞ。ちなみに例のセリフが出るのは本編開始からわずか1分58秒後である。アッと言う間にその時は来た。

唖然とするサザエ
© 長谷川町子美術館

まあ! 気が違ったのかしら。かわいそうに、きっと自動車に撥ねられて頭がおかしくなっちゃったんだわ

 ウオオ! 音がある!! その後自動車に撥ねられて気が触れたんだろう!?とかなんだい! 調子に乗ってるのはそっちじゃないか!人をきちがい扱いしたり、おだてたり!とガンガン「き——」の類いを投げてくる。私は放送禁止用語についてはある程度は仕方がないことだと思っているけれど、やはり作られた時代や作品の設定によってはいじってしまうと不自然になったり意図が不正確になったりするので、なるべくそのまま流してくれとも思っている。だから『サザエさん』に消音がなかったのはとても嬉しい。しかも今回はデジタルリマスターまでされていて、画質も音声もとっても綺麗なのだ。サザエさんの声は今と同じで加藤みどりが務めているけれど、今の声の方が活気があって若いし魅力的だ。加藤みどりの偉大さを改めて感じさせる。

 ちなみに『サザエさん』は当初から1話3本立てだったみたいで、「75点の天才!」も「押売りよこんにちは!!」「お父さんはノイローゼ」と合わせた3本立てである。「75点の天才!」以外は「き——」の類いの文字が1度も出てこなかったが、「押し売りよこんにちは!!」ではワカメに向かって刃物を振り回す押売り業の男性、「お父さんはノイローゼ」では生命線が長いという理由だけで病気ではないと断言する医者(“おおやぶ病院”勤務)が登場するなど、内容的に地上波でやるにはちょいと厳しそうなものであった。これ長谷川町子の意思(遺志)がなくても再放送やソフト化はあんましなかったんでは……とか思わんこともない。

 Amazon.co.jpが『サザエさん』の公式スポンサーになった時、これで過去作がプライムで配信されるのでは……? なんて期待を滲ませたコメントをちょいちょい見たけれど、まさかほんとに配信されるとは思わなかったな〜。しかもプライムで追加料金なしだもんね。平成最後にとびきりのプレゼントをありがとう。

サザエさん

Amazon Prime Video

last up:2018/12/27