あらすじ:交通事故によって入院生活を余儀なくされた萩尾春海は、入院先に勤める看護師・西村麗子と意気投合。経済的な不安もあって退院後に麗子とルームシェアを開始する。肉親と不仲で家族愛に飢えていた春海は、気の合う麗子との共同生活に幸せを見出していた。だが、次第に麗子の言動に異常性が見え始め……。

映像に優れたサイコ・サスペンス

 いきなりネタバレになるけれど、犬——特にチワワ好きには確実に地雷な映画である。私はフィクションと割り切れる要素と割り切れない要素は人によって大きく異なるものだと思っているけれど、それでもこの映画における犬の描写を犬好きの人が割り切って観るのは不可能に近い気がする。サスペンス映画の巨匠として知られたアルフレッド・ヒッチコックが作中で子どもを殺して大ひんしゅくを買ったという話を連想させる。

 思うに、善と悪をしっかり認識しておらず、かつ自分の感情を的確に表現できる能力に乏しい存在を傷つける描写は精神的なダメージが大きいのだろう。自分の感情を的確に伝えるのは大人でだって難しいのだから、子供や動物となればなおさらだ。きっと犬が好きな人であれば文章だけでもかなり深いな気分になると思うが、知らずに映画を観てしまうよりマシだと思ってください。犬(チワワ)好きの地雷になるシーンとは……

 チワワの首煮込み鍋

 ただそれを示唆するだけでなく、ほんのわずかだが、チワワの首が鍋から覗くカットもある。もちろん作り物だろうが、パッと見た感じかなり精巧だったので犬好きにはかなりキツいはず。この映画はPG12(※12歳未満は保護者同伴の観賞が勧められる映画)指定となっているが、その原因はおそらくここにあるのだろう。PETAな人からは「おめーらいつも牛や鶏を煮て喰ってんじゃねーか!」って言われるかもしれないけども。ちなみに深田恭子(以下・深キョン)はプライベートで犬を飼っているらしく、このシーンは直視できなかったそうだ。

 そんなわけで犬(チワワ)好きの人にはおすすめしかねる内容だけど、しかし映画としてはなかなか良いものだと思った。はっきり言って日本を代表する大根女優・北川景子と深キョンのW主演ということでぜんぜん期待していなかったのだが、映像が秀逸だったおかげでほとんどストレスフリーで観ることができた。

 この手のサスペンスもののでまず気になるのは“暗さ”。薄暗いシーンばかりなのに明暗が上手く効いていないのか、人物や小道具がすっかり背景に溶け込んでしまい、見えね〜と思うことがかなり多い。でも『ルームメイト』ではその辺がしっかりしていて、暗いところでも見えるべきものがちゃんと見えていた。カメラワークも的確で滑らか。終盤にあった画面を2分割にした演出はダサかったけど、それ以外はほぼ完璧だと思った。

 脚本も最初は粗を感じるものの、最後まで観ればきちんと回収されることがわかって好印象。ただ、小川絵里(萩原みのり)の存在と最後の工藤謙介(高良健吾)のくだりはちょっと余計だったと思う。これのせいで終盤が若干冗長になった気がする。しかしこれも映像の完成度を考慮すれば目を瞑れるレベル。やはり映像作品は映像が命。映像さえ良ければ多少の粗は飛び越えられるのだ。

 そしてぜんぜん期待していなかった深キョンが意外と好演していたのも良かった。ここでは一人二役なのだが、ちゃんと切り替えて演じられていた。もっともちょっと極端すぎるきらいはあったけれど、ぜんぜん許容範囲。おっとりした感じの役しかできないと思っていたが、意外と演技の幅は広いのかもしれない。

 対する北川さんは相変わらず。片足の骨折が完治していない設定なのにまるでそうとは見えない歩き方だし、深キョンに叩かれて抗うシーンなんかはほんとダメで冷めるかと思った。ふたりは同じ大根役者だけど、深キョンは“おっとり系の女性を演じたら右に出る者なし”とも言える特徴的な演技ができるのに対して、北川さんはただひたすらに下手くそなだけなのが辛い。演技の幅が狭いのはもちろん、どんなキャラクターなら合うのかもまったく想像できない。2000年代まではまだデビューして数年だし……なんて言えていたが、この映画が公開された時点でもう役者生活は10年を突破しているし、仕事にも相当恵まれているのだ。いつまでも初舞台の女の子のようじゃ困るんだよな。

 興行的には失敗したようで、上映時の映画館では閑古鳥が鳴いていたという話もあるが、私はなかなか気に入っている。日本版『サイコ』って感じ。でも『サイコ』みたいに長ったらしい台詞回しや冗長なシーンが少なかった分、こっちの方が好きかもしれない。もうちょっと客入りがあっても良いと思うのだが、なぜこんなにも興味を持たれなかったのか。“評判が悪い”ならまだしも観客の絶対数が少ないわけだから、映画の出来以前に宣伝に問題があったのは確実だ。

 私が思うに、「女の素顔は恐ろしい。」というキャッチコピーを筆頭とした“女同士の暗い人間劇”を思わせるような宣伝方法が良くなかったのではないか。映画を観た後なら、これらの宣伝はミスリードを狙ったものだとわかるのだが、逆に言えば映画を観ない限り“女同士のイザコザもの”だと認識してしまう人が多いだろう。少なくとも本来のジャンルである“サイコ・サスペンス”が好きな人の食指を動かすことはできない。私も当時はまったく観たいと思わなかった。今回もたまたま観られる環境にあったから観ただけだったし、そうでなければ一生観ることはなかったと思う。

 ほかの原因として挙げられるものといえば、北川さんと深キョンのW主演だろう。ふたりとも他の俳優さんに助けられてなんとか活きるタイプなので、このふたりが主演とか言われると……ね? 深キョンはまだ北川さんより演技ができるけど、彼女の長所である“おっとり系”のイメージはこの映画の宣伝からはまったく見えないため、不安を感じて回避した人も多かったのでは。しかしこの映画での深キョンは北川さんを頑張ってサポートしているし、深キョンの演技が苦手な人でも好感を覚える可能性はあると思う。それにふたりのビジュアルが好きな人なら、きっと観て損はしないようなシーンがあるし。思いっきりネタバレてしまうと、

 北川景子と深田恭子のキスが見れるのは『ルームメイト』だけ!(たぶん)

 というわけで、北川さんと深キョンのビジュアルとサスペンス系のものが好きな人にはおすすめ。犬好きは相当覚悟した上でどうぞ。

last up:2016/12/26