あらすじ:格闘技と銃の達人の海空来、敏腕エンジニアの原田、元刑事でヌードル狂の黒川は、危険な仕事を請け負う危険代行業“DSA”を営む3人組。偶然知り合った気弱な小学生・あさみから羨望の眼差しを受けながら、今日も危険で一風変わった仕事に挑む! 世界的な評価を受けるアニメーター、梅津泰臣の初めてのテレビアニメ監督作。全13話。

“超逸品のB級アニメ”兼“作画崩壊駄ニメ”

 映画監督・クエンティン・タランティーノを始め、海外を中心とした著名人から高い評価を受けるアニメ監督・梅津泰臣が初めて製作したテレビシリーズ。2003年にリアルタイムで観ていたなあ。当時は梅津泰臣についてまったく知らなかったけれど、たまたまアニメの存在を知って面白そうだからという理由で観始めた。第1話開始後すぐに「これは当たりだ!」と思った。単純にアニメーションの質が高いというだけでなく、中国武術と銃器を組み合わせたアクションシーンにセンスがありすぎる。もうカッコいいのなんのって。

 あとあと調べてみたら、梅津さんはタランティーノが『キル・ビル』の撮影時に栗山千明にゴーゴー夕張を演じる上での参考資料として見せたアダルトアニメ(※海外ではアダルトシーンをカットしたR-15版でリリース)『A KITE』の監督を務めた人だということがわかった。その話を初めて聞いた時は“アダルトアニメ”という部分に引っかかったものだが、『MEZZO』の第1話を観たらその引っかかりも一気に吹っ飛んだ。こんなにすごいアクションシーンを描けるなら、そりゃ惚れるだろう! と。

高クオリティの第1話
© 2003 梅津泰臣/「MEZZO」製作委員会

 ストーリー面は若干陳腐なラブストーリーと幽霊の登場とあってどことなくB級な印象はあるものの、アニメーションの素晴らしさのおかげで単なるB級アニメではなく“逸品なB級アニメ”になる可能性をプンプンと匂わせていた。さすがに毎回このクオリティを保つのは難しそうだけど、このアクションシーンのセンスさえあれば多少雑になってもなんとかなるだろう——そう思っていたのだが、その後予想していた以上に作画のクオリティが低下し、ただの駄ニメに成り下がってしまった。

作画崩壊が始まる第3話
© 2003 梅津泰臣/「MEZZO」製作委員会

 ただ絵が汚いだけなら、まだ我慢できる。しかし動画枚数が著しく減って“アニメーション”になっていない場合はそうはいかない。『MEZZO-メゾ-』はまさにアニメーションになっていないアニメーションと化してしまった。本格的にダメになったのは第3話からで、もう動画枚数は少ないわ、演出は冴えないわ、エンドロールでは英語表記のスタッフが増えるわ、誰がどこから見ても見事な失敗作の道を突き進んでいった。

 なぜエンドロールの英語表記がよくないのかというと、人件費の安い韓国や中国に仕事を発注していることがわかるからだ。アニメオタクの間では予算に余裕がないアニメの指標のひとつとして有名。同じ理由で漢字三文字表記のエンドロールも警戒されている。改めて観ると第1話の時点で漢字3文字表記が多かったので、この時点で少し勘づくべきだったのか——。

第3話以降の平均的なクオリティ(これは第8話)
© 2003 梅津泰臣/「MEZZO」製作委員会

 しかし最終話では何故か作画の調子が超回復し、梅津流アニメーションを存分に楽しませてくれた。へなちょこ作画を辛抱強く見続けた身も少しは救われたものだが、もしも今『MEZZO-メゾ-』を観ようとしている人がいれば「第1話と最終話だけ観ればいいですよ」と伝えるだろう。はっきり言ってストーリー的な見所はほとんどないのである。おそらくサブストーリー的に扱うつもりだったであろう気弱でいじめられっ子の小学生・あさみ(松来未祐)の成長や恋愛感情もいまいち描ききれていないし。変に辛抱しないで美味しいところだけペロッと頂くのが、このアニメとの上手な付き合い方だと思う。

 例外として、広川太一郎の広川節——アドリブ演技——のファンには全話観賞をおすすめする。梅津さんが広川節の大ファンだそうで、全話で広川節が炸裂しているからだ。私は当時広川節をまったく知らなかったから最初は違和感を抱いたけれど、ずっと観続けているとこれがなかなかクセになる感じで、最終的にほとんど広川節目当てに観ていた。黒川のおっちゃんのキャラクターともよく合っていたしね。

 ちなみに本作は同じく梅津さんが監督した『MEZZO FORTE』というアダルトOVAの設定を引き継いで作られた一般向けアニメだった。基本的には“設定は同じだけどまったくの別物”といった風になってはいるが、第5話は露骨に『—FORTE』を絡めた脚本になっていた。当時は『-FORTE』を知らなかったので頭に疑問符を浮かべながら観たものだが、『-FORTE』を観てから振り返るとなかなか粋な計らないだと感じた。ただし作画はやっぱりダメダメ。さらに回想という体で『-FORTE』の超絶作画を引っ張り出すもんだから、余計に惨めな感じになっていた。

 しかしそんなダメダメ作画でも放送後に多少の手直しはしたみたいで、記憶の中にある『MEZZO-メゾ-』よりはほんのちょびっとだけマシになっていた。リアルタイム当時に1番ひどいと思ったのは第3話で海空来が車内でカラオケをするシーンで、“歌い出す海空来”→“高速道路の照明灯”→“高速を走る車”の3カットを1分ほどひたすらリピートするというものだった。これが“海空来がカラオケを始めた途端、車ごと空を飛ぶ”という謎すぎる展開に修正されていた。元々の絵を知らない人は『新世紀エヴァンゲリオン』の最終話並みに意味を求めてしまいそう。

 それにしても梅津泰臣ともあろう人がまともにアニメを作れる環境に恵まれないとは、なんとも世知辛い。3年前の『ウィザード・バリスターズ〜弁魔士セシル』もちょっとアレだったし。もう1度秀逸なアクションセンスをドーンと発揮できるチャンスを得られれば良いのだが。

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last up:2016/12/22