あらすじ:ミニ四駆の世界選手権・WGPのインターミッションイベント中に、突如未エントリーの謎のマシンが乱入した。その名はガンブラスターXTO。WGPに向けて開発されていたマシンだが、GPチップ「γ」を搭載したのが原因で暴走を始めてしまったという。TRF Victorysはマシンのオーナー・リオンとともにガンブラスターを止めようとするが……。

ミニ四駆ファンの親子で楽しめる劇場版

 1990年代はバブル崩壊で不景気の色が強く、さらに阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件、ノストラダムスの大予言などもあって暗い印象が強いが、それに反して子供向け業界は非常に活発だった。『美少女戦士セーラームーン』や『魔法騎士レイアース』といった『なかよし』系列をメインとした少女漫画のヒット、『ポケットモンスター』の誕生、ハイパーヨーヨーによるヨーヨーブーム、プレイステーションやニンテンドー64といった次世代ゲーム機の発表などなど、たくさんのホビーが子供達を誘惑していた。

 中でも高い人気を誇っていたのはタミヤ模型から発売されたミニ四駆だろう。1980年代に徳田ザウルスによる漫画『ダッシュ!四駆郎』のアニメ化がきっかけとなってブームが起きたものの、アニメの終了と同時に人気は急降下。それでもあともう1回、ミニ四駆でガキから金をふんだくりてえ! というタミヤ模型とコロコロコミックの熱意によって生まれたのが、こしたてつひろによる『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』である。快活で親しみやすいキャラクターが楽しくミニ四駆をいじくる様に、子供たちはすぐに夢中になった。ミニ四駆という商品そのものに備わっていたデザイン性やカスタム性の高さもあり、ミニ四駆は空前絶後の大ブームとなった。

 この劇場版『爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP 暴走ミニ四駆大追跡!』は、そんなブーム真っ盛りに上映された映画である。漫画もアニメもおもちゃも大好きだった私は、もちろん劇場に観に行った。20年も前の出来事ということもありぼんやりとしか覚えていないけれど、劇場を出る時にはかなりの満足感を抱いていたのは覚えている。

 そしてええ歳こいた今振り返ってもけっこう面白い。ガンブラスターは高機能なGPチップを搭載しているせいで暴走しているという設定だが、単にシステムエラーで終わらせず“仲間を求めている”という理由付けを施したのもイイ。このへんはコロコロコミックのホビー漫画にありがちなオーバー設定だけど、その先にあるオチを単なる精神論で終わらせず、しっかりGPチップを絡めていたのも好印象。

 私はもう『—レッツ&ゴー!!』の基本設定をほとんど忘れてしまっているので、観ている間中「そういや、この世界では“風”とか“空力”が強大な力を持っていたなあ」とか、「そういや、こいつらやたらにハンバーガー食ってたなあ」とか、「そういや、豪って高所恐怖症だったなあ」とか、記憶の片隅にあった知識がムクムクと出てくるのも楽しかった。たかだか動くおもちゃを捕まえるためだけに戦闘機が出てくるって展開も「ああ、これが『—レッツ&ゴー!!』だよ……」って感じで大満足。

 作画の方はアニメ本編と同じく良好。現実のミニ四駆の挙動をベースにデフォルメ演出を加えることで、アニメならではの迫力を出しているレースシーンは今観ても見事だ。この辺は作監の高見明男の手腕なのかな。

 しかし劇場版でありながら劇場版らしい派手さがイマイチないのは気になった。悪い意味でもアニメ本編そのまんまって感じなんだよね。特にオープニングはアニメ本編からの流用じゃないか? エンドロールでは英語表記がずらずら並んでいたし、意外と製作に余裕がなかったのか……。いや、作画はほんとに良かったんだけど。

 ほかに気になった点といえばクスコ博士(郷里大輔)が「ガンブラスターはあと5分も持たずに自己破壊する」と断言してからガンブラスターとTRF Victorysが対決するまでに空模様が変わりすぎで少なく見積もっても1時間は経ってるだろとか、エンドロールの「友情出演 ミニ四ファイター メカニックマン」って何? とかそれくらいかな。子供なら満足して劇場を後にできる映画という感じがしました。今はまた軽くミニ四駆ブームみたいだし、『—レッツ&ゴー!!』世代の親とお子さんで一緒に観るのも楽しいかもしれないね。

 しかしほんとに「友情出演 ミニ四ファイター メカニックマン」ってなんなんだ。同時上映された実写映画『ミニ四ファイター 超速プロジェクト スイッチ・オン』(ミニ四ファイターとメカニックマンが主演)はここでは関係ないよなあ。作中に登場したキャラクターのモデルという意味にしても、メカニックマンは出てなかったろ。うーん、わからん。

last up:2017/01/14