あらすじ:ひ弱だが優しい心の持ち主の不動明とぶっきらぼうでキレると歯止めがきかない飛鳥了は、双子のように瓜二つの顔を持ち、実の兄弟のように同じ時間を過ごす親友同士だった。だが、エネルギー資源の研究・開発を行っていた了の父がデーモンの生命体を発見したことで、ふたりは全人類を巻き込んだ非道な運命に導かれていく。

10年以上の時を経た今もなお色褪せない駄作

 永井豪の『デビルマン』と言えば日本漫画史上に残る傑作として今なお根強い人気を持つ存在で、その名を知らない者は日本で——少なくとも日本の漫画文化が好きな人であればほとんどいないと言っても過言ではない。私は世代が異なることもあって漫画を読んだことはないが、当然のようにその名を知っている。“永井豪”と言われて真っ先に浮かぶのは『キューティーハニー』だけど(子供の頃にリメイク版の『—F』を観ていたため)、『デビルマン』はその次に思い浮かぶくらい、永井さんの代表作だと認識している。

 そんな名作の実写映画化ということもあって公開前からそこそこ話題になっており、映画に興味のない私の耳にも情報が入っていた。しかしいざ公開されると、その話題性はまったく違う方向を向いていた。とにかくめちゃくちゃひどい映画だぞ! という声がわんさか出てきたのだ。この『デビルマン』が公開される少し前には『CASSHERN』が公開され「邦画史上屈指のダメ映画」などとボロクソに貶されていたのだが、『デビルマン』公開後は「『CASSHERN』なんて全然マシだったじゃん」と手のひらを返す人が続出したほどだった。

 その後も『デビルマン』の評価が覆ることはなく、微妙な映画が公開されると常に『デビルマン』を指標にした感想が散見される事態となっている。しかし私は「駄作をみんなでバカにしようぜ!」というような風潮がどうにも好きになれず、2017年に至るまで意図的に『デビルマン』を避けていた。もっと言うとリアルタイムで話題になる作品はどうしても評価に一定の流れができるので、影響を受けやすい私としては自分の感情に冷静に向き合えないデメリットが大きいと感じてしまい、評判が良かろうが悪かろうが、とりあえず一線を引きたいという気持ちが出てくるのだ。ついでに私はドケチなので、楽しめないものに金を払うのは厭なのである。

 だが、『デビルマン』はすでに公開から13年が経過した。未だに話題になることはあるが、当然公開当時ほどの荒れ模様にはならない。そして私は【TSUTAYA DISACS/TSUTAYA TV】の無料体験を試し始めたので、今なら出費なしで『デビルマン』を観られる。ようし、ものは試しだ、観てみるか!

 ——となったのは、たしか2017年2月のはずだった。今は2018年の1月である。本当は観賞後すぐに感想を書き溜める予定だったのだけど、伸ばし伸ばしにここまで来てしまった。結論から言えば、私の評価も世間一般と同じである。

 『デビルマン』のダメ要素としてよく挙げられるのは「演者が棒」。実際、W主演を務めた伊崎兄弟はかなりの拙さだ。もはや棒というレベルではなく、ど素人が思いつきでやってみたような感じですらある。例えば序盤でヒロインの美樹(酒井彩名)と会った時に笑顔で手を振る明なんかはかなりヤバイ。


© 2004「デビルマン」製作委員会

 手を振るのはわかるとして、なぜ腰まで振るのか。しかも明は交通事故で両親を亡くし、美樹の家に居候している身なのだ。おまけに通う学校は同じ。毎日厭というほど顔を合わせる相手にこのリアクションはどう考えても大げさすぎる。というか、それ以前になんか気持ち悪い。普通に生活する上でこんなクネクネした動きをすることなんてあるだろうか? 劇中ではこの明のように「なんでこんな挙動になるねん」というレベルの演技がすごく多く、その中には演技指導が行き届いていれば防げたものもあるのではないかと感じる。演者が棒なのは事実だが、その原因を演者だけに求めるのは酷だと思う。

 映像も全編に渡って安っぽい。演者とCGの動きやアフレコの声、カメラワーク、すべてが相まって大変にしょぼい。一貫して画面がワントーン暗い感じに見えるのも気になる。照明のせいか? 悪い意味で現実的な暗さで、同じ環境で素人が撮っても同じ画が撮れてしまいそうなくらいチープだ。

 ストーリーや演出にも引っかかるところが多く、同じ学校なのに帰宅途中に別方向からやってきて合流する美樹とか、明をいじめていた牛久(仁科克基)に報復するため了が持参した武器がめちゃくちゃでかい植木ばさみだとか、ロサンゼルスからの映像だと言う画面にいち早く登場する警官がスゲー日本人くさい(一応英語を喋ってはいるが発音が日本人のそれに聞こえる)だとか、いちいちなんじゃこりゃと思う場面が登場して真面目に観ていられない。

 『ガッチャマン』が公開された時「これは『デビルマン』の再来だ!」と言っている人もいたけれど、あれはただ話の転がし方や演出に疑問符がつく部分があっただけで、映像にはちゃんと映画らしさがあったように思う。しかし『デビルマン』は話の転がし方も、演出も、映像も、音声もすべてがチープで、もはやプロの仕事とは感じられなかった。私も『ガッチャマン』はつまらないと思ったが、「『デビルマン』級」という評価を見ると「正気か!?」と言いたくなる。それくらい『デビルマン』はレベルの違う映画だ。若い役者陣は不器用ながらもかなり奮闘しているように見えるので、くだらねーと笑い飛ばすのも気が引ける。そうした点からしてもかなりタチの悪いダメ映画だと思った。

『デビルマン』のいいところ

 以上のような『デビルマン』への批判はメディアでいくらでも目にできるので、ここからは敢えて『デビルマン』のいいところを取り上げたい。まず第1に、デビルマンのデザインが結構カッコいい。


© 2004「デビルマン」製作委員会

 これだけ見るとちょっとカッコいいでしょ。全身が映るとのっぺり感が出るし、アクションも微妙だけど……。ただ、CG自体のレベルについては正直よくわからない。当時は「プレイステーションと変わんないじゃん!」とこれまた酷評だったらしいけど、私は『ファイナルファンタジー(『デビルマン』の3年前に公開)と大差ないように感じてしまう。『ファイナルファンタジー』の方は当時「内容はともかく、CGはすごかったよ」と言われていたものだが。それから『デビルマン』が公開されるまでの間に技術がそんなに進化していたのだろうか。CGに興味がない私にはなんとも言えない。


© 2004「デビルマン」製作委員会

 “実写とアニメのコラボレーション”として生まれた線画アニメーションの演出もなかなかイイ。CGのシーンにわずかにだけ挿入されるんだけど、使うタイミングがなかなか絶妙だったよ。尤も、あんまり出てこなかったけどね(笑)。でもこれは今後の映画作りにも活かされて良いんじゃないかなあ。

 棒だの大根だの散々の言われような伊崎兄弟も、目力についてはかなり魅力的だと思う。終盤に睨み合う場面は普通に画になっていると感じた。それ以外の演技はほぼ評判通りなんだけどね。これも活かすべきだと思うよ。

 あとは美樹と川本さん(渋谷飛鳥)ね、とても良い百合だと思う。大して交流がなさそうなのに川本さんを本気で心配している美樹と、美樹を信頼している川本さんの関係性には素直にグッと来る。百合好きの人は美味しいんじゃないかな。ここをフィーチャーすればワンチャンあるで!

 最後にこれはちょっと個人的な話なんだけど、私、漫画家の夏目義徳が好きなんですよ。夏目さんの長編デビュー作である『トガリ』は私のバイブルと言って良いほど。そんな彼が2017年に以下のような衝撃的なツイートをした。

プライムであの有名なデビルマンが見れるので停止しながら確認したら俺ちゃんと映ってたわ。懐中電灯持って家になだれ込んでた。

Natsumelo Anthony @summereye 2017年10月21日

赤いレザージャケットにロン毛、丸い懐中電灯を持ってった。

Natsumelo Anthony @summereye 2017年10月21日

 つまり『デビルマン』にエキストラで出演していたのだ! そういうことは早く言ってください! でもこのツイートを頼りに探しても夏目さんの姿はよくわからない。なぜなら夏目さんが参加したのは夜に電気の落ちた家に乱入していくシーンだから。真っ暗でほぼ何も見えない!(笑)でもファンとしてはちょっと面白い。原作者の永井さんもカメオ出演しているから、原作ファンの方もそこだけは美味しかったよね。いや、どうかな。

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last up:2018/01/16