あらすじ:幼い頃、倹約家の両親の影響で満足にオシャレを楽しめなかったレベッカ。その反動なのか、成長すると無計画に買い物をしてしまう“買い物依存症”を発症。気づけばクレジットカードの延滞料金は1万7000ドルに迫り、おまけに勤め先も解雇される大ピンチに。そんな時にうっかり掴んだ転職先は、まさかの経済専門雑誌の編集部で……?

石原さとみ主演ドラマの原型?

 オシャレ大好き、お買い物大好きなヒロイン・レベッカは、リストラされたのをきっかけにかねてからの夢であったファッション雑誌の編集者を目指して就活を開始。紆余曲折の末、憧れの雑誌の出版社に入社することはできたのだが、配属先は右も左も分からない経済専門雑誌の編集部。希望とは違った場所だったが、出版社の受付の男性から「上手くいけばファッション雑誌の編集部に異動できる」と示唆されたこともあって、とりあえずここで頑張ろうと決意する——というあらすじなのだが、こんな設定のドラマ、最近どこかで観たような(笑)。

 実はドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』を初めて観た時、ぱっとこの映画の存在を思い出したのだ。だいたいのあらすじを知っているだけだったが、ちゃんと観てみると思ったよりもよく似ている。スカーフがキーポイントとして機能する展開もそっくりだ。これは確実に影響を受けているだろう。

 『地味にスゴイ!—』では主人公の河野悦子(石原さとみ)が校閲部に配属されることの説得力(記憶力と観察力に長けているから)が充分にあったし、地味な存在である“校閲部”に配属されたからこそ“地味で目立たない仕事でも世の中になくてはならない大切な存在である”というメッセージを伝えることができた。しかし『お買い物中毒な私!』の方は、主人公が経済専門雑誌に配属される必然性をほとんど感じられなかった。配属のきっかけとなった手紙や世間の注目を浴びるようになったコラムの内容はほぼわからないから、今レベッカがなぜこの場所にいるのかもさっぱりわからない。

 そもそもレベッカは仕事に対してやる気がなさすぎる。『地味にスゴイ!—』の悦子は今の仕事に不満を感じながらも、与えられた以上は全力で取り組むという真摯さがあったので“文学を全く読まない”というキャラクターでも校閲の仕事で成果を出すことに違和感はなかったが、レベッカは経済のことがさっぱりわからないまま適当な仕事をしているから、ヨイショされる度になんでやねんと思ってしまう。レベッカ以外のキャラクターもその言動にいちいち説得力が欠けているため、俳優陣がキャラクターになりきれていない印象が強く、物語にぜんぜん入っていけない。全体的に説明不足なのだ。

 “カードによって気軽に買い物ができるようになったけど、そこにつけ込んで商売をするのって道義に反することもあるよね。カードを使う側もあまり後先を考えずに買い物をするとお金では買えないものを失うよ”と、そういうメッセージを込めた映画であることはわかるのだが、それが映画を通して伝わってくるというよりは、そのメッセージを通して映画を観ているという本末転倒な感じになっていて、どうにも退屈であった。ついでにキャスト全員の顔がどこかどんよりしていて、ハリボテかゾンビみたいになっていたのもマイナス。これは照明が悪いのかね。

イタリア製の靴に目がないリュウイチ(ヨシロウ・コウノ)
© TOUCHSTONE PICTURES AND JERRY BRUCKHEIMER, INC.

 それはそうと、“イタリア製の靴に目がないリュウイチ”というサブキャラとして出ていたヨシロウ・コウノが気になった。単純に『ストリートファイター』シリーズのリュウみたいでかっこいいなあと(笑)。演技のコミカルさもなかなかツボだった。発音的に日本育ちかなと思ったら、やっぱり若い頃に単身渡米した身らしい。NYの舞台を中心にいろいろされているようだ。

 同じくサブキャラでは“時計狂いのフリーク”役で出ていたジョン・サリーも良かった。元NBA選手って設定だったけど、調べてみたらホントに元NBA選手でびっくりした。バスケファンなら誰もが知る超名プレイヤーらしい。演技も浮いていなかったし甘いマスクだし、普通に俳優かと思った。特別俳優業をしているわけじゃないみたいだけど、表情や仕草が生き生きしていて楽しかった。この映画においてリュウイチとフリークは数少ない収穫であった。

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last up:2016/12/23