あらすじ:ペイシェンス・フィリップスは、一流の化粧品会社・ヘデア社に広告デザイナーとして勤めていたが、自社の新製品の美容クリーム「ビューリン」が人の細胞を破壊する副作用を持っていることを知ったために、企業のトップに暗殺された。だが、彼女は生前に助けた猫によって蘇った。新たな彼女の名は、“キャットウーマン”。

「自由気まま」に縛られた猫

 最低の映画に贈られるゴールデン・ラズベリー賞で作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞を受賞した伝説のダメ映画。主演のハル・ベリー目当てで観たけれど、まあつまらない。

 主人公のペイシェンス(ハル・ベリー)はイマイチ冴えない女性という設定で、身なりも伸ばしっぱなしの髪、ダルダルの服、化粧品にもあまり興味がない感じに仕上げている。しかし、こうした設定も一流の化粧品会社に勤めている時点でほぼ無意味なものになっている。あくまで広告デザイナーとはいえ、一流企業に行ける腕があるのになぜわざわざ興味のない化粧品を扱う会社にいるのか解せない。

 冴えないペイシェンスの設定はイケメン刑事のトム(ベンジャミン・ブラット)に好かれることでさらに台無しになる。ふたりの出会いはペイシェンスがアパートの窓の庇から降りられなくなっている猫を見つけたことから始まる。ペイシェンスは猫を助けるため窓づたいに猫に近づこうとするが、足場が悪いために動けなくなり、あわや転落かということになる。そこで助けてくれたのがトムだ。

 その後、トムはすぐにペイシェンスにアプローチを仕掛ける。いやいや、なんでだよ。危険を顧みず猫を助けた優しい心の持ち主だから——ということにしたいのだろうが、正直あの現場を目撃したら最初に思うのは「優しい心がどうたらこうたら」ではなく、「無謀なことすんなよ」だと思う。ていうか出会ってからアプローチまでの展開が早すぎて顔が好みだったからとしか思えない(笑)。一目惚れが悪いわけではないが、ペイシェンスは冴えない設定なのだ。そんなホイホイ惚れられたら矛盾するだろう。

 そしてキャットウーマンになったペイシェンスが何をするのかというと、盗み。なんの脈絡もなく「アクセサリーほしいわー」で宝石店に行ってお宝拝借。意味がわからない。基になった『バットマン』のキャットウーマンは泥棒らしいから「キャットウーマンと言えば泥棒でしょ」ってノリでやったのかもしれないが、そもそも『バットマン』をよく知らない私はいきなり盗みを働く主人公に度肝を抜かれるほかなかった。

 要するに、この映画はいちいち説明不足なのだ。プロットを作ったはいいものの、そこから掘り下げることをせずにそのまま映画にしてしまったような感じ。まるでダイジェスト映像のように美味しい部分だけ観せてくるから、ストーリーを理解することはできても深くはハマれない。

 さらに最悪なのは、アクションシーンもイマイチなこと。アメコミ原作の映画なんて十中八九アクションが見どころだろうに、よりにもよってここが超絶にヌルい。『CASSHERN』を連想させるくらいヌルい。予算は桁違いらしいので映像は圧倒的に豪奢ではあるのだが、それ以外に違うところが見当たらない。本当に「豪奢になった『CASSHERN』」としか言いようがないくらいヌルい。

 『CASSHERN』は反戦や反差別へのメッセージが愚直に出ていたけれど、『キャットウーマン』はそれもない。一応、「若さや美しさに囚われるな」というメッセージはあるのだが、それがめちゃくちゃ薄っぺらい。だってペイシェンスはキャットウーマンになったらバリバリに化粧をするし、それ以前に美人な容姿をあんまり隠していないし、べらぼうに優れたスタイルは全然隠していないどころか誇示しているし、撮影当時30代後半とは思えないくらい見た目が若いし、男からはほぼ一目惚れされるのだ。なにからなにまでメッセージと反対ですやん。

 ペイシェンスは最後に「猫は自由気ままだから」という理由でトムと決別する。これもおそらく「女性は自由に生きていい」というメッセージなのだろうが、普通にトムはいいやつだし、くっついてもええやんとしか思わん。それに猫って自由気ままに飼い主のところに帰ってきたりするもんだし。とってつけた感がすごくて全然かっこよくないぞ。

 そもそも『キャットウーマン』ってタイトルだけど、キャットウーマンになる必然性がまったくないのよね。ペイシェンスは自分が冴えないことを自覚している感じはあるが、自分を変えたいという意思は特に見えない。キャットウーマンという存在についても「自由気ままに生きられる」ぐらいの説明しか得られないから、キャットウーマンになっても目的は見えず、いきなり窃盗をやらかしたかと思えば、思い出したかのように正義の味方になったりする。ストーリーがダラけているから、アメコミ原作映画特有の爽快感もまったくない。

 自由気ままに行動しているはずなのに、「自由気まま」というキーワードに縛られているように見えてしまう、なんとも切ないキャットウーマンだった。

last up:2017/07/16