あらすじ:暗黒時代——それは人類とアンドロイドの関係が逆転した時代。アンドロイドを束ねるブライキング・ボスは地球を破壊する人類を憎悪し、彼らに代わって世界を支配しようとしていた。絶望の淵にいる人類たちの唯一の希望は、アンドロイドにも負けぬ力を持つという救世主“キャシャーン”であった。

90年代っぽさがビシバシくるリメイクOVA

 1970年代に人気を博したテレビアニメ『新造人間キャシャーン』のリメイクOVA。1993年発表。最初に言っておくと『新造人間キャシャーン』はまったく世代じゃないし、観たこともない。さらに言えば興味もほとんどなかったのだが、今作のキャラデザを偶然見かけて「梅津泰臣っぽくない?」と思ったら、やっぱり梅津さんがキャラデザ&作監をされているというので、ほんとにそれだけの理由で観た。梅津さんの絵のタッチが好きな身としては、全4話で梅津節な絵を観れてたいへん美味しかった。といっても3話は梅津さん参加してないっぽいけども。

 『—キャシャーン』をまったく知らないのにどこか懐かしさを感じるのは、1990年代的なペンタッチと彩色のせいだろうか。若干デジタルっぽい明るさを除けば、記憶にある1990年代のアニメそのままだと思う。1980年代末に生まれ、物心ついた頃にはすでに1990年代に入っていた世代としてはノスタルジックに浸らずにはおれない映像だった。アニメーションのそこはかとないぎこちなさなんかもそれっぽい。こういうアニメーションあったあったって感じ。

 しかし私が1番期待した梅津的でダイナミックなアニメーションはあまり観られなかった。タツノコプロの公式YouTubeチャンネルにアップロードされている『新造人間キャシャーン』第1話のアクションシーンを観るに、たぶんオリジナルの演出をなぞる形で作られたのだと思う。梅津さんの個性は抑えられているわけだ。オリジナルファンの評判は知らないけれど、オリジナルを知らない私には画面が単調に感じた。とはいえ、絵は綺麗でよく動いていたので不満ということはない。単に私が少しターゲットから外れていたというだけなのだろう。それよりも気になったのは一部カットが暗かったことだ。

パカパカ対策
© 1993 NIPPON COLUMBIA CO.,LTD.

 かつてのアニメには異なる色を高速で入れ替える“パカパカ”という演出がよく見られた。キメ台詞や必殺技などの見せ所にインパクトを与えたり、スピード感や激しいショックを演出するために用いられた手法だ。しかし、1997年に起きた“ポケモンショック“——テレビアニメ『ポケットモンスター』の「でんのうせんしポリゴン」回を観た視聴者がパカパカ演出によって光過敏性発作を発症した事件が起きたことで、この演出は廃止された。それ以前に放送されたアニメでも、該当の演出があれば再放送や再販を行う際に修正が施されるようになった。この光過敏性発作は明るい色であればあるほど発症の危険性が高くなるため、多くのアニメでは該当シーンを暗くすることで対応している。

 『キャシャーン』の一部カットが暗いのも同じ理由だ。これは件のアニメの放送以前に作られたものだし、ヒーローアクションものとあってパカパカ演出も多い。だから暗いカットも結構ある。もちろん“ポケモンショック”のことを考えれば、こうした処理が仕方ないことぐらい理解している。けれど、たまに「ここまで暗くする必要があるのか?」ってくらい暗くしている映像があったりして、ひっかかることも多いのだ。今回は全体的に色が明るいことと修正箇所が多いことが重なっているのか、妙に画面が暗く感じてちょっと萎えた。

 こうした修正が施された映像を観ると、騒動当時のことを思い出す。私も御多分に洩れず『ポケットモンスター』が大好きな子供で、テレビアニメも第1話から毎週観ていたのに、件の話だけ放送時間に寝ていて観れなかったのだ。そんなこともあろうかとビデオ録画はしていたけれど、観ようと思ってテレビをつけたらちょうど第一報が入ってきて、当然のごとく親から視聴禁止&上書き消去命令が下された。件の話はそのまま欠番となったため、初期の『ポケットモンスター』で私が唯一観たことのない話になってしまった。普通に考えたら危険を回避できてよかったねって話になるはずなんだけど、色々とタイミングがよすぎて本人にとっては微妙な思い出になっている。

 そんなところも含めて、このアニメは1990年代っぽいなとも思う。とにかく、もうちょっと元の映像を尊重できるような対策法がほしいものだ。

 ストーリーは基本設定をすでに知っている人向けのようだった。オリジナルをまったく知らない人間からすると展開が早くてよくわからなかった。総集編を観ている気分というか。つまらないわけではないけど、ふーん……としか言えない感じ。オリジナルのファンでないと評価できないな、こりゃ。

 でもこういったド直球なヒーローものを観たのは久しぶりだったので、却って新鮮で思ったよりも楽しめた。主題歌が影山ヒロノブという点も含めて王道だった。ちょっと胸焼けするレベルで。絵は一貫して梅津的だったし、もの足りなかったアクションも最終話でのブライキング・ボス戦だけはちょっぴり梅津っぽくて、梅津ファンとしても損はしない感じだった。

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last up:2017/01/02