あらすじ:かつて手際鮮やかな宝石泥棒“キャット”として名を馳せたジョン・ロビーは、戦時中のレジスタンス活動により恩赦を受け、現在は善良な人間として悠々自適に暮らしていた。だが、“キャット”と類似した手口の宝石泥棒が現れると生活は一変。ふたたび警察からマークされ始めたジョンは、平穏な生活を取り戻すため自ら“偽キャット”の捕獲に乗り出した。

メイキング

 1954年初頭頃、ヒッチコックはパラマウント側からデイヴィッド・ドッヂによる小説『泥棒成金』の映画化を持ちかけられる。南フランスが舞台の物語で、現地でロケがてらに観光できると思ったヒッチコックは喜んで承諾し、すぐにキャスティングを提案した。彼の理想は主人公のジョン・ロビーに『断崖』『汚名』で起用したケーリー・グラント、ヒロインのフランシス・スティーブンスに『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』で仕事をしたグレース・ケリーだった。当時ケリーと契約していたMGMは『喝采』でアカデミー主演女優賞を獲得して注目の的だった彼女を貸し出すことを渋ったが、ケリー本人が本作の出演を強く希望したこともあって、最終的にはケリーの貸し出しに同意した。

 ケリーは本作の話を持ちかけられる以前に複数作品への出演が決まっていたため、撮影はそれらの仕事が終了する5月から開始されることになった。ヒッチコックはその間に脚本家のジョン・マイケル・ヘインズと脚本を練った。脚本は4月下旬には完成し、5月には撮影準備が整ったスタッフが続々と現地へ赴いて行った。

 他作品の撮影が終わったケリーが5月下旬に現場で合流すると、本格的に撮影がスタートした。フランスでの撮影は6月から7月初旬にかけて行われ、その後はハリウッドに戻ってスタジオ撮影を行った。

 8月にはすべての撮影が終了。完成された映画はそれから約1年後の1955年8月4日に封切られた。批評家による評価は芳しくなく、特に『ハリウッド・リポーター』に載った“序盤の5分間で多くのミスが見られる”という旨の批評はヒッチコックに大きな打撃を与えたという(だが、後年の『映画術』では、ヒッチコック本人もまあ、どうでもいいような、くだらない話と自嘲気味に語っている)。一方でフレーム構成や照明効果については高く評価され、撮影監督を務めたロバート・バークスにはアカデミー賞(最優秀撮影賞カラー部門)が贈られた。

逸話

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管理人より

 サスペンスというよりは『暗殺者の家』以前によく撮られた軽いコメディとロマンスを楽しむタイプの映画だ。ケーリー・グラントとグレース・ケリーという美男美女による演技とヒッチコックという敏腕映像作家のタッグから生み出される映像はたいへんロマンチックではあるが、それ以外にはとくに優れた面はなく、ストーリーにも面白味がない。この映画では『見知らぬ乗客』以降ヒッチコックから全幅の信頼を得ていた撮影監督・ロバート・バークスが生涯唯一のアカデミー賞を受賞しているが、ほかの彼の仕事と比べて本作のそれがとくに際立っているかというと、これも微妙なところだと思う。

 ケーリー・グラントとグレース・ケリーを始めとしたキャストはしっかりと仕事をしているので、俳優を目当てに観るのであれば損はないかもしれないが、それ以外の目的で鑑賞するのは個人的にはおすすめし難いところです。

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last up:2016/12/14