あらすじ:父が国家反逆罪で裁かれたショックから自堕落的な生活を送るアリシアの前に、FBI調査員のデヴリンが現れる。彼は、父とは逆にアメリカに対して強い愛国心を持つアリシアを同僚としてスカウトしに来たのだ。ふたりはナチス重役が潜伏するブラジル・リオでともに生活を始めると、次第に惹かれ合うようになる。しかしその愛は、国家から下された任務によって引き裂かれていく。

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メイキング

 『白い恐怖』を撮影中の1944年、ヒッチコックはプロデューサーのデイヴィッド・O・セルズニックから、ジョン・テインター・フットの短編『ドラゴンの歌』を渡された。同作は1921年に発表されたもので、かつて敵国スパイの情婦となって諜報活動をしていた女性が、社交界の紳士との結婚を前にその過去を思い悩むというメロドラマ調のストーリーだった。『白い恐怖』の撮影が終了したヒッチコックは脚本家のベン・ヘクトと打ち合わせを進め、この短編から“敵国スパイの情婦となって諜報活動を行う女性”という要素だけを抜き取り、完全なオリジナル作品を作ることにした。

 1945年4月には大まかな脚本とキャストも決まり、撮影開始に向けた準備が着々と整っていった。しかしセルズニックは本作の脚本を気に入らず、さらに同時進行していた『白昼の決闘』の製作に没頭していたことから、企画をRKOに売って自身はプロデューサーを降りると告げた。これによりヒッチコックは不本意ながらプロデューサー業を兼ねることになった。

 撮影は1945年10月から開始され、翌年1946年の4月に終了した。そして4ヶ月後の8月に封切られると、一般客・批評家問わず好評を得た。さらに興行収入でも成功し、制作費200万ドルに対して利益は800万ドルにも上ったという。

逸話

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管理人より

ヒッチコックがサスペンスに専念する前に撮っていたメロドラマのような静かな緊張感と、1950年代の最盛期に撮った傑作群に見られる力強い緊張感がバランスよく存在している映画である。フランソワ・トリュフォーがヒッチコック映画の神髄(『映画術』より)と言ったのも、こうしたふたつの時代の魅力が備わっているからかもしれない。

 ふたつの時代を見事に取り入れられたのは、主演のイングリッド・バーグマンとケーリー・グラントによる功績も大きいだろう。ふたりは、互いに愛し合っているにも関わらずそれが叶えられないもどかしさ、そして身の危険を伴う任務への緊張感がしっかり伝わる演技を見せており、この映画が持ちうる可能性を最大限に引き出してくれている。

 ただし『北北西に進路を取れ』や『サイコ』といった派手なサスペンス性はないため、そうした要素を求めている人には勧めるべきか迷うところはあるかもしれない。しかし、それらの派手さにいまいちピンと来ず、ヒッチコックは肌に合わないと感じている人には、ぜひ勧めてみたい映画だ。もちろんヒッチコック未経験の人にもおすすめしたい1作です。

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last up:2016/09/04